アルプスのヒラヤマ

斎藤美奈子の『挑発する少女小説』という挑発的なタイトルの新書(だが優れた少女文学解説書)を読んでいて、ふとシャンシャンのことを考えた。『ハイジ』の章である。アルムの山から大都会のフランクフルトに連れてこられたハイジはホームシックから夢遊病…

咳をしても一人

昨年末の紅白で、さだまさしが『秋桜』を歌った。この歌の最初のほうの歌詞に「このごろ涙もろくなった母が/庭先でひとつ咳をする」という一節がある。歌っている自分は縁側のあたりに(たぶん)いて、話したいのに母は庭先で秋桜を眺めていると思ったら母…

しばらく

PASMOのチャージをしようとしたら、となりの券売機で老人が唸っている。5千円札を入れようとしているのに券売機がお札を受け容れてくれないのだ。「どうしてかな」と老人の手の先で震える紙幣が差し込み口を彷徨っている。見かねたものだから「やりましょう…

亡くなった母には独創的なところがあって

亡くなった母には独創的なところがあって、息子の友達が遊びに来ると知れば、はりきってワカメとベーコンのパスタを作るような人だった。こういうのは初めて食べるなあ、という友達の様子を見て、オレもだよと思ったりした。あるいは、溶いた卵を寒天に流し…

読書会

箒木蓮生を好んで読む人がいて、その人の提案で、今月のテキストは紫式部『源氏物語』になった。長い話なので、ときどき、少しずつ、日数をかけて読んで行こうということにして、今回はまず始めの三帖(桐壺、箒木、空蝉まで)を読んで集まった。1ヶ月に読む…

ちゃんと繋がっている

隣家の庭木の一本が、昨日か今日で一息に薄紫色の花をつけた。前を通りかかったときに気がついて、いつの間にと思いながら眺めていたら、ようやく涼しくなって庭仕事に出てきた隣家の老主人が、一緒に花を見上げながら「何の木だったっけなあ」と言う。 野暮…

不完全な良心回路

ウルトラマンや、仮面ライダーシリーズ、スーパー戦隊ものは代を重ねてテレビ放映が続いているようだが、そういえば宇宙刑事のようなメタルヒーローを最近見かけない。仮面ライダーに取り込まれてしまったか。宇宙刑事にはあまり関心がなかったほうだが、メ…

リスキリング

最近よく「リスキリング」という言葉が聞こえて来る。はじめ「リスキ・リング」かなと想像した。テレビ局のアナウンサーの発声が、そんなイントネーションだった。ならば「リスクを高めて何かの能力を発動させる」とか「窮鼠猫を噛む」とか、そういうことの…

シンクロニシティ

自宅には『ジャズ批評』が一冊だけある。リーモーガン生誕80年を記念したハード・バップの特集号である。 今朝、暇つぶしに開いてみたら、リー・モーガンの誕生日が今日(7月10日)であったことを知り不安におそわれる。たとえ偶然であったとしても、これを…

何年か前に『バーのある人生』というタイトルの本を買ったのだが、本棚に積んだまま、まだ読んでいない。いつか自分が「走り高跳び」か「スロットマシン」にハマる日が来るのを楽しみに待っている。

私は、穴だらけのジグソーパズルを埋めにかからなければならない。 たとえば「古池や蛙とびこむ水の音」と詠まれた蛙は一匹だったのか、というような些細なこともふくめて。

『約束のネバーランド』が、カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』を連想させるという意見はありそうだが、自分はなぜか『ライ麦畑でつかまえて』を思い出してしまう。 ライ麦畑のなかで何千という小さな子供たちが何かのゲームをしている、大人は自分だ…

明け方、ふと目が覚めて寝つかれず、ふと思い出して、ずいぶん前に読みかけて放り投げていた、足立紳『喜劇愛妻物語』の続きを読みはじめてみる。"三週間後、香川へと出発する日の朝、俺たち家族は薄らと明るくなってきた午前四時二十分に家を出た" ちょう…

ちくま学芸文庫の『深く「読む」技術』という本を読んでいたら、終盤で野坂昭如の小説『火垂るの墓』の冒頭部分が引用されてきた。そこで、ふいに主人公の清太が死んだのは昭和20年9月22日であったことを知る。今日である。

持っていた折りたたみ傘をしぶしぶ開いて駅に向かって歩いていたら、駅に着く前に夕立がやんだ。雨は俄かに始まって俄かに終わった。ふたたび夕陽がさして、歩道も看板も黄金色に光るし、青空には雲が白く発達している。暖かい雨の匂いが立ち上ってきて、少…

ようやく陽射しが出てきたので、先月Amazonで購入した古書を縁側に並べていたら、一冊の隙間から展覧会の優待券が2枚出てきた。 「新宿・伊勢丹美術館『日本近代文学館創立20周年記念 近代文学展-秘蔵文庫・コレクション特別公開』6月11日(金)ー22日(火)」 …

ひばりヶ丘駅の階段を、大声で歌いながらというより怒鳴りながら降りてくる若い女性がいた。たぶんすれ違いざまに飛沫を浴びてしまったと思う。でも、そんなことよりも、歌う彼女の迫力のほうが感染力が高そうだった。あれはたぶん宇多田ヒカルの『オートマ…

枝豆を貪り食い、手に余った鞘を小鉢に叩きつける、やさぐれるとはそういうことだ。

"みわたせばいづこもおなじアウェー感ただよふ宇宙の居心地のよさ" 惑星フリーザ在住の匿名希望のFさんからの投稿。「宇宙」と書いて「そら」と読むようになったのは宇宙世紀でも79年頃からだろうか。季語がないけれども俳諧ではないのからこれはこれで良い…

いま一番好きな3歳馬はルージュバックである。がんばってほしい。図書館で『チボー家の人々』の2巻目を借りる。どうも同じタイミングで読んでいる人がいるようで、3巻は無理に借りずにおく。

東京10R箱根特別の馬柱にヘルデンテノールの名前を見つける。去る1月11日の中山9R初咲賞で、一瞬ながら謎の1番人気に推されたあのヘルデンテノールである。その日、この馬に渾身の「◎」を打って世間の耳目を驚かせ、力をも入れずしてオッズを動かし、目に見…

武田泰淳『秋風秋雨人を愁殺す』読了。自分が不勉強な点は反省するとしても、事を起こす前に捉われ処刑された女性革命家がなぜ教科書に載るのかわからない。ついでに言えば、1968年の作品がなぜ今頃(2014年)になって、ちくま学芸文庫の新刊として出版された…

いや間に合わないだろうと思いながら、ふとJRAのホームページを覗いてみると、どうやら開催変更があったようで、東京9R立春賞の発送時刻は5分遅れの14時40分に変わっている。いやそれでも間に合わないだろうと首を振りながら、路線案内アプリで最寄駅からの…

咳が止まらないので、飲む約束を急きょ延期させてもらい帰宅。

風邪が治ったような気がしたので、遠慮しながら職場の新年会に参加。

9Rギリギリ間に合わない時刻に中山に着いた。情けないことに体調不安があって午前中は地元のクリニックで検査を受けていた。そこで渡された処方箋を妻に預けて慌てて電車に乗ったのである。そういうところも情けない。 沢崎さんとオケラオーは先に着いて始…

ラヴェル『亡き王女のためのパヴァーヌ』が聴こえると思ったら、都営大江戸線が発進する時のモーター音だった。紛らわしい。

林真理子『女文士』読了◎(吾妻ひでお式評価法)。映画『Shine』○。石黒正数『それでも町は廻っている(11)』◎。キズナ『毎日杯(G3)』◎。

飲み会。新宿のマッコリ・バー『てじまぅる』。デジカルビの”デジ”は”豚肉”のこと。”電気”とか”大事”とかは関係ない。”てじまぅる”については意味不明。二東マッコリを甕で注文してがぶがぶ飲む。ワイルド。

飲み会。曙橋の『GarNI(ガルニ)』。やきとんとワイン。とくにロゼワイン。