ひばりヶ丘駅の階段を、大声で歌いながらというより怒鳴りながら降りてくる若い女性がいた。たぶんすれ違いざまに飛沫を浴びてしまったと思う。でも、そんなことよりも、歌う彼女の迫力のほうが感染力が高そうだった。あれはたぶん宇多田ヒカルの『オートマチック』だったのだと思う。オートマチックの「オ」に「゛(濁点)」がつくような彼女のR&Bは、しばらく雨のなかをさまよって、やがて遠くへ消えてしまった。