いや間に合わないだろうと思いながら、ふとJRAのホームページを覗いてみると、どうやら開催変更があったようで、東京9R立春賞の発送時刻は5分遅れの14時40分に変わっている。いやそれでも間に合わないだろうと首を振りながら、路線案内アプリで最寄駅からの移動時刻を検索してみると、なぜか14時25分には新宿駅に到着できることが分かってしまう。
どうしても買いたいわけではなかった。堅い決着も予想された。それでも強いて言えば、14ヶ月半の休養明けのエアルプロンが馬券に絡んだら悔しいだろうな(東スポ本紙がポツン◎だし)、ここ目標に調整したというヤヤラーラが逃げ粘ったら悔しいだろうな(開催替わり初日だし)、と思う程度のどこにでもある1000万下特別だった。それが「ベストを尽くせばギリギリ間に合うかも知れない」という事態によって、何か特別な特別レースとして新たな啓示に結びついたのである。人間は試されるときにこそ最も身近に神の存在を感じるのではないだろうか。
投票の締め切りはおそらく発走2分前の14時38分だろう。山手線は14時25分に新宿駅に着いて、できるだけ南口寄りの車両から降りれば5分以内に新宿WINSに辿り着けるとして14時30分、しかしそこから、あの、ノロノロもたもたしているうえに幅が狭くて追い越しもできないエスカレータに身体を預けて最低でも3階まで(2階は1点1000円以上なので)移動しなくてはならないが、それでも14時33分には発売窓口の前に立てるにちがいない。そこで投票作業をするのに約5分もの猶予が与えられている計算になるがブライトさん(あのガンダムホワイトベースの)なら「3分でやれ」というだろうから、念のため山手線のなかでマークカードを引いておき、必要な金額を財布から抜いてズボンの前ポケットにしのばせた。なぜかカバンの底に未記入のマークカードが見つかったこともまた後世に伝うべき奇跡に違いなかった。
そうして無事に新宿WINSで東京9Rの馬券を10点購入でき、そして14時41分47秒過ぎ頃に、すべてが徒労であったことを確認して帰ってくる。