武田泰淳『秋風秋雨人を愁殺す』読了。自分が不勉強な点は反省するとしても、事を起こす前に捉われ処刑された女性革命家がなぜ教科書に載るのかわからない。ついでに言えば、1968年の作品がなぜ今頃(2014年)になって、ちくま学芸文庫の新刊として出版されたのか、その理由もよくわからない。
武田泰淳は、農民の黒い帽子を見て、どんな理想を掲げても世間の本質は変えられない事実に戦慄していたが、さらに恐ろしいのは、何もせずとも気づかぬうちに世間はゆっくりと少しずつ変化していくという事実のほうではないだろうか。黒い帽子はいずれ単なるファッションに過ぎなくなり、いやすでにもうファッションですらなくなっているかも知れない。良きにつけ悪しきにつけ、過去の記憶を引き継ぎ共有していくことは、文化や文明を築くことに他ならないが、しかし、ただそれだけのことに過ぎなくて、人間が永遠に明るい心で暮らしていけるなら、語り継ぐものなどむしろ無いほうが良いのではないだろうか。何を言っているのか分からなくなってきた。