萌えの日” らしい。O田女史が教えてくれた。一瞬、燃えるゴミの日かと思ったら、そうではなかった。そういえば腐女子の生態に関する新書が新刊で出ていたねえ、とO田女史に話してみると、腐女子よりもさらに上の、「貴腐人」 という棲息領域もあるらしい。深い。さらに801とか、BLとか。いろいろあるらしい。よくわからないが、最近、今市子の 『GAME』 とかいうコミックを読んだばかりだということは黙っておいた。

オレさまの抱く ”萌え” のイメージに多少の誤解はあるかも知れないが、この ”萌え” の精神状態というものは、古くは、宇宙戦艦ヤマトの森雪とか、ウルトラ警備隊のアンヌ隊員とか、仮面ライダーの蜂女とかに対する、あの得も言われぬ飢餓感にまで遡ることができるのではないかと想像する(オレさまの友人には、コブラ男にぐぐぐっときた、というヤツもいたが)。

オレさまも、ひそかに如月ハニーに対しては特殊な感情を抱いていた時期があったわけだが、齢を重ねるに従って、少しずつサブカルチャーが放ち続ける閃光の眩さに耐え切れなくなってきて、近頃はもっと過去の遺産に想いを馳せることが多くなった。とりあえずモジリアニの裸婦に萌え、ブーシェやアングルの描くオダリスクに萌え、『春』 に描き込まれた愛欲の女神の扇情的な眼差しに、モナリザの指先に、首のないニケ像や腕のないビーナス像に萌え、そして片目のネフェルティティに ”萌え” が発動してしまうのである。いや、ことによると額田王の恋歌にも、清少納言のエッセイにも、いやそれだけではなくて、インドの舞踏団だの、回教寺院のアラベスクだの、社会主義者自由主義者、白人や黒人やアボリジニやインディアン、過去や未来、納得いかない子供たち、沈みかけた太陽、新しい自転車、うまくいかない大人たち、京都大原三千院、赤坂のサントリーホール、マンハッタンの摩天楼、モーツァルトト短調、オーストラリアの有袋類アラビアのロレンス、赤・黄・青・黒とのコンポジション、イスパハンのアストロラーブ、ノルウェーの森、ニーベルンゲンのブリュンヒルデ、フランスパン、テムズ川、円卓の騎士、ガウディの遺産、シロナガスクジラ奥の細道アルハンブラ宮殿の思い出、アイソトープ、くずれかけた壁、フェザープレーン、オルゴール、色絵金銀彩羊歯模様八角飾箱、トマソン、10月、アケボノゾウ……