なんでも地震のせいにしてしまえば良いと思っている後輩のO田女史が、「昨日の晩、地震がありましたよね?」 と周囲の先輩たちに確認して回っているのだが、クールな都会生活に慣れてしまった先輩たちは誰も 「知らない」 と冷めた言葉を返すばかり。
比較的身近な先輩であるオレさまは、もちろんその地殻変動を知覚していたので、「あったよね」 としっかり同調してやったのだが、しかしながら他の人は誰も知らない様子である。確かに日々の激務で疲れているのだから、地震ごときで目を覚ましていたらシステム開発だの運用保守だのやっておれぬのだがな。

それにしても、このままでは嘘つきになってしまうのではないかと、自身の地震の知覚に対してさえもうすっかり自信を失いかけているO田女史は、おろおろしながらもなお他のいろいろな人に同じ事を聞いて回ろうとしたので、「一人でも仲間がいたのだから良いじゃないか」 とオレさまが自分を指差しながら言うと、彼女は一瞬だけ振り向いて、ただ深いため息をつくのだった。






ハツカネズミと人間