西日暮里駅から根津周辺まで妻と散歩する。我らは俄か不忍ブックストリート探検団である。本来であれば、日暮里から谷中銀座へ侵入したほうがより賑やかだったかも知れないのだが、もともとの用事は根津神社参りで、西日暮里駅から千代田線に乗り変えてさっさと根津まで行ってしまうつもりだったのが、天気が良いため気が変わってしまったというのが本当のところである。まあ、いいか。そうした気まぐれのおかげで、とりあえず藍染と古民具の 「ノスタルジア」 という面白い店を見つけた。しばらく店内の古民具だの時計だのTシャツだの眺めてみたりする。

先を急ぐ必要があったことと、妻が寄り道の天才であったことから、我々は夫婦喧嘩を余儀なくされ、不穏な空気を身にまといながら、何もかもが空腹のせいであるという結論に至り、我々は足早に根津神社のふもとまで駆けつけて、たい焼き屋の長い列に加わった。10分くらいは並んだはずである。薄皮のなかに餡子たっぷりのたい焼きは1個140円。明るいうちから売り切れることしばしばなので、後の人のため欲張らずに必要なだけを購入するべきという配慮から、我々は2つだけ購入しその場で頬張った。

根津神社つつじ祭りである。さぞやつつじが賑やかだろうと想像していたのだが、まだ3分の1くらい。ちと早かったか。とりあえず参拝しようと本殿に臨めば、いつもと違って賽銭箱の前に沢山の人が並んでいる。仕方がないので列に加わってみたりする。お御籤を引いたら、妻は大吉、オレさまは小吉だった。なかなか良い。ここに来ると落ち着く。ていうか、落ち着かされる。

つつじ祭りということで、境内には沢山の出店が並んでいた。空腹であることをまた思い出し、お好み焼きを1つ買って、適当な場所に腰を下ろして食べる。お金を払ったのはオレさまで、3分の2を食べたのは妻だった。「ちょっと頂戴」 も回数を増やされると被害甚大である。

境内をひとまわりすると、丁度、本殿の裏手あたりで猿回しが始まった。ちょっと覗くだけのつもりだったのだが、最後まで観てしまったうえに、小銭まで叩いてしまった。なにしろ、お猿のナパちゃんの 「助走」 にはすっかり感心させられた。この猿はきっとオレさまより遥かに充実した生活をしている。

日暮れまでに帰りたかったので、日暮里方面へむかって不忍通りをせっせと歩いていたら、空気を読む技術には長けているくせにわざと亭主を困らせたがる妻が 「コーヒーが飲みたい」 とか理不尽なことを言い出しやがった。ぜったいに甘やかしてはいけないと思ったのだが、妻がその場ですぐに指差した店が「ブーサンゴ」という店で、なかなか興味深い雰囲気を醸している。
http://www.bousingot.com/index.html
しかたがないので、ウキウキしながら店に入ってみた。とりあえず、どうやって継続させていくかが課題になりそうだが、コーヒーの値段も古書の品揃えも店長の仕草にも無理がなくて良い。また訪ねてみようと思う。