夥しい数の白鳥の骸が、洗濯機から物干し台まで続いている。いったい何があったのか。恐らく何者かの衣類のポケットにティッシュがはいっていて、それを洗濯することを我が家の洗濯機が選択してしまったものと思われる。妻がいま、それと気づかずに事実を陽の当たる世界に曝そうとしている。白鳥の骸を丁重に拾い上げながら物干し台に上がっていくと、洗濯物を忌々しげに眺めていた妻が視線を変えてこちらを厳しく睨みつける。
「どうやらポケッとした人がポケットにポケットティシューを入れっ放しで洗濯機に放り込んだみたいね」
とかいうものだから、オレじゃないよ、とはっきり否定しておく。あたしがやるわけ無いじゃない、と風邪気味の妻は反論しつつ咳き込みながら鼻をかんだティッシュをまるめてゴミ箱を探すが見つからないのでジーンズのポケットに突っ込んだ。
「あたしだ!」
呆れながら通勤電車に乗って出社。人身事故の影響で少しだけ遅刻してしまったがお咎め無し。