朝9時に出社。4時間ほど作業して障害対応は完了。13時に退社。そのまま上野に向かう。

真直ぐ 『日曜美術館30年展』 を開催中の芸大美術館に入る。チケットを渡すと地下2階へ案内される。いきなり高橋由一の 『鮭』 が待っている。とりあえずその大きさに困惑する。画面をじっくり見ながら残りの切り身で白飯が何杯食べられるかと計算してみたりする。

狩野芳崖は 『悲母観音 下図』 の1枚きりだったが、下図のクセに圧倒的。繊細かつ優美な描線の美しさに絡め獲られて動けなくなる。同じく1枚きりのルノワールの裸婦もぐっとくる。特に彼女の目が良い。「あ、コンビニ行くならアイス買って来て」 って言っているような目線。ピカソの描いた青い肖像画は白州正子にしか見えない。じつは鏑木清方はあまり好きではないのだが 『曲亭馬琴』 の大画面の前でしばらく立ち尽くしてしまった。オレさまは大画面に弱いのだ。それにしても鏑木清方はこんなに描き込める画家だったのか。

藤島武二の 『黒扇』 は印象派のような印象を受けるが、もともと日本画からスタートした画家らしく、日本画的な余白を活かす描き方が成功している作品であるとするのが正いのだそうだ。西洋の印象派の画家たちも、日本絵画の影響を受けているわけだから、どちらから向かっていっても日本画的油絵というものは、こういう形に落ち着くということか。

岡本太郎もいる。相変わらずの、暴れる原色を白で制圧するやり方。それにしても岡本太郎の絵に何故見入ってしまうのか。いつも不思議に思う。例えば、この原始的というか始原的というべきか溢れ出して尽きることのないエネルギーの前では、原子力潜水艦でさえ川に浮かぶ枯れ枝に過ぎないのではないかとさえ思われてくるわけで、上流へ遡るべきか、海に向かうべきかと迷いつつ、まあ、いいか。

観たかった作品ばかりが揃っていて高揚する。まあ、あれだ。日曜美術館は昔から好きで観ていたのだから、それも当然のことかも知れない。気になる作品を一つ一つ挙げていくとキリがないわけだが、全く思いがけなく嬉しかったのは、富本憲吉の 『色絵金銀彩羊歯文飾壷』 を直に観ることができたことだった。いったい、こうまでしなければならない理由とは何だったのだろうかと想像しつつ、にやにやしながら眺め入ってしまった。

15時半に上野グリーンサロンで、待ち合わせていた妻と合流。妻は国立西洋美術館で 『ベルギー王立美術館展』 を観てきたらしい。そんなの聞いてないよ。池袋まで戻って、東武百貨店の上のほうの蕎麦屋でお酒を飲んでから帰る。