O西さんが少し遅れるということで、予約した店の地図と電話番号をメールで連絡してくれた。出かける間際に、O田女史に地図をプリントしたかと聞いたら、「あんなの覚えました」 と答えながらノートブックをぱたんと閉じたので、近頃の若者は優秀であるなと感心する。O田女史と二人でJR御茶ノ水駅を降りて神保町方面へ歩く。明治大学の少し向こうですからというので、O田女史のナビゲートにしたがってみるわけであるが一向にそれらしき店の看板がみつからない。このあたりのはずですから、コンビニのレジで聞いてみますとか言っている。おいおい。分からないそうですとか言って帰ってくる。あたりまえである。いったいO田女史は何を覚えたのか。オレさまもコンビニに入って、二人で地図を立ち読みしてみる。ああこの辺りでした、とかいって神保町の駅を示す。だいぶ向こうではないか。もう予約の時間を過ぎているので大慌てで小走りに移動する。

「でも案内図にはJR御茶ノ水駅から徒歩5分て書いてあったんですよ」  

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案の定、神保町の駅周辺をうろうろしても 『五大陸』 という看板は見当たらない。これはもうO西さんに聞くしかない。電話してみるようにいうと、じつはO西さんの携帯の電話番号が分からない。だんだん楽しい気分になってきた。人生とは問題解決の連続である。とりあえず公衆電話から仕事中のY山さんに連絡をとると、携帯電話が壊れてしまって分からないからといいながら、その辺にいる人に聞いて回ってくれた。オレさまが復唱するそばからO田女史がO西さんに電話をかける。遅れてくるはずのO西さんは、すでに店に到着していた。

というわけで、O西さんに道を教えてもらって、オレたちが店に着いた頃には、ちょうど新しいビールが3つ、テーブルに置かれようとしていた。実にグッドなタイミングであると、笑いながら乾杯する。
ところで 「五大陸」 というのは、どことどことを指すのか。O田女史の場合、南極が含まれるらしい。ユーラシア、アフリカ、北アメリカ、南アメリカ、南極、の5つではどうかというが、南極はかなり怪しい。オレさまの場合は、インドを数えたい。アジア、インド、アフリカ、北アメリカ、南アメリカ、である。インドはしかし半島ではないかとO西さんに指摘される。たしかにちょっと地続きなだけで、あのアラビアといえども半島扱いされておるしな。確かにインドは大陸ではない。O西さんとしてはオーストラリアが気になるらしい。しかしながら、南半球の土地を数に含むことには、南極と同様に少し抵抗がある。あるいはヨーロッパをどうにかするべきではないか、ウラル山脈がどうとかこうとかいう意見もあがってきたが、結局、何をもって 「五大陸」 とするのか分からず仕舞いだった。本当は面白いことが言いたかったのである。

オレさまはいま仏教に凝っているので、親鸞とか、梵天勧請とか支離滅裂に語りつつ、そのうちに焼酎ロックをコップに1杯飲んだら急に眠くなって、一生懸命に目を開けようと努力したのだが、不覚にも少しだけ眠ってしまったらしい。目が覚めてO西さんとO田女史の二人に会計を促して解散。たとえわずかな時間でも、お酒の席で眠ってしまったのは初めてである。