中秋の名月。会社を出た時には鏡のような妖しげな円だったが、自宅に着くころにはムラ雲の後ろに隠れてしまった。『月の顔見るは忌むこと』などというし(竹取物語)、いっそのこと鏡のような月面を凝視しつつ気がふれてしまう手もあるかと思ったりもしたが、今日のところは正気でいたいという無意識のほうがまだ勝っていたようである。