大哺乳類展

義弟の子供二人を預かって、妻と4人で上野の『大哺乳類展』を見学しにいった。だいたい想像したとおりの行軍内容で、予測したとおりに子供の一人は迷子にもなったし、思ったとおり溶けたソフトクリームで洋服がベタベタにもなった。ただ想定外だったのは、動物園のほうが開園記念か何かで無料だったことで、科学博物館をひととおり見学した後のついでに動物園にも立ち寄って、子供たちの愛して止まないゾウとトラとゴリラだけを選んでゆっくり観て帰るという、思いがけなく豪勢なツアーが実現した。

夕方4時頃には上野駅を離脱して、そのまま子供二人を我が家へ連れて帰り、これも予定どおりに一泊させた。大人の方はもうかなりヘトヘトで、夕食後は少しでも早く寝かし付けたかったのだが、就寝時刻はたいがい夜9時だと聞いていたのに、夜8時を過ぎても二人の子供たちは充電したての電気カミソリのように元気一杯だった。トランプだのしりとりだのを重ねた後、ようやく布団に入ることに調印してくれたものの、それには条件がついていた。

そういうわけで寝物語を聞かせてやる。最初は、オリジナル創作で、白いおばけと黒いおばけがイチゴを食べる話をしてみたが尻切れトンボで失敗。次に、季節的にも丁度良さそうな 『北風と太陽』 を話して聞かせてみたが、暖かい春の陽気で眠気を誘うつもりが、太陽が出てきたことで反対に活力を与えてしまったらしく失敗。全然眠ってくれない。

次は『シャツの恩返し』というこれもオリジナルの話を始めてみたが、これは内容の途中から(ツルの恩返しだ)(ツルの恩返しだ)という子供たちの囁きが聞こえてきて、ネタがばれてから以降はツッコミの嵐で失敗。これについては、我慢できなくなった亭主が障子の隙間から部屋の中を覗いてみるとシャツが着物を織っていました、というシュールな結末においても子供の理解を得るには無理があったようだ。

4番目に用意した『泣いた赤信号』は、ほんとうは ”泣いた赤鬼”だと思うからよく調べてからにしてくれとニベもなく却下された。仕方がないので、最後の切り札に取っておいた『サファリ桃太郎』をぼちぼち話し始める。お婆さんが川の洗濯場で大きな桃を拾い損ねて、慌てて走って桃を追いかけ追いかけ、追いかけ追いかけ、やがて桃とともに太平洋に行き着いたところまでで中断。子供たちは眠ってしまった。だいぶ心に響いたらしい。本当はこの後、お婆さんがカリブ海で海賊をしながら桃太郎を育て、やがて成長した桃太郎は、ライオン、ゴリラ、ハゲタカの3頭の猛獣と猛禽を連れて、キリマンジャロに鬼退治に行き、沢山のダイヤモンドを持って帰る予定だったのだが残念。あれこれ話の構成を修正しているうちにどうやら自分も眠ってしまったらしい。