シンクロニシティ

朝刊の記事に目がとまる。恐竜の絶滅はやはり巨大隕石の衝突が原因であると国際研究チームによって結論づけられたらしい。すでに粗方決着のついていることと聞いていたので記事の内容にはそれほど驚かない。ただ、つい先日読んだばかりの丸谷才一『思考のレッスン』という書籍のなかで、この隕石説を唱えたウォルター・アルヴァレズの『絶滅のクレーター』という著書がとりあげられていたことを思い出し、そのシンクロニシティの不思議に戸惑ってしまったのである。

丸谷才一は、この隕石説にいたる思索の筋道を、読書によって得た情報を活用し仮説を立てて考えていくことですばらしい成果をあげた好例とし、”アルヴァレズ父子の想像力を駆使しての探求が文学的”とまで評していた。その時点でかなり気になっていたわけだが、そこへもってきてこの新聞記事である。これは”読め”あるいは”買え”という天の声なのではないのか? 古書店か? アマゾンか? あーいや、まあ、少し落ち着かねばな。自制心に隕石を落としてどうするか。

巨大隕石が地球に衝突したと思われるのはBC6500万年、アルヴァレズ父子による隕石衝突説の発表が1980年、ユカタン半島に巨大クレーター跡が発見されたのが1991年、『絶滅のクレーター』の発刊は1997年、『思考のレッスン』の初出は1998年、その丸谷才一の文章を自分が読んだのが2010年、東北大など国際研究チームが結論に至ったのも2010年。