二日酔気味に目が覚めてみると家の中に妻がいない。冷蔵庫の中にも、ハミガキ粉の中にも、テレビの中にもいない。近頃少し放っておき過ぎたか。とうとう愛想をつかして出て行ったのに違いないと、夢ばかり駆けめぐる枯野を漠然と心に思い描いてみたり。つい海賊船になど乗って後悔したり。そのうちに妻から電話。逆探知を狙う刑事のように3つ数えて受話器をとる。どうやら大掃除に必要な買い物に出ているらしい。電話の向こうから知的な声音で、タッパーに焼き飯が入っていますからとかいうので、とりあえずごめんなさいと謝っておく。
昼頃から実家へ移動。予定どおり大掃除を手伝わされる。夜は妻と二人で労働の後のビール。妻は2杯目あたりからもう身振りが大きくなって ”語り” まで入りだした。どうやら酔っているらしいと本人も弁明する。”酔ってません” と主張する酔っ払いなどはまだまだです、私はあえて ”酔っています” と申し上げたい、とか演説し始めたので慌てて連れて帰る。熱帯夜。たった三杯では夜も眠れず。