オデュッセイア』 に、”翼のある言葉”という表現が良く出てきて、何のつもりかよく分からんと思っていたのだが、『パイドロス』 を読んでいたら、そのなかでホメロス語りの人たちの非公開の詩というものが紹介されていて、エロースの本当の名前はプテロースで、翼(プテロン)を生いしむる力のあるゆえにその名を持つのだという。ということは、”翼のある言葉” とはつまり愛情に満ちた言葉と解釈しても良いような気がする。とはいえ、プラトンより前にホメロスがいたわけだから順序としては逆なのだろうけれども、そのように受け止めるととても辻褄が合うような気がする。ちなみに紀田順一郎氏の著作に 『翼のある言葉』 という新書があるが、こちらはドイツの慣用表現から採られたものらしく、「時と場所を超えて胸に飛び込んでくる言葉」 の意味で用いられるとのことで、古代ギリシャとの関連性は不明。