鉄腕アトムの誕生日だがそれはそれとして、帰りの電車の中で生き物の数え方について話し合う。蝶の正式な数え方が1頭、2頭……であることは周知の事実であるが、トンボの生態に詳しいというK山女史の兄上の見識によると、一般に昆虫ならば1頭、2頭……と数えるのが日本古来の慣わしらしい。なるほど蟷螂や鍬形、甲虫、雀蜂ならそんな数え方も似合いそうだ。しかし、そうなるとクモなどは昆虫に分類されない分だけ雲行きが怪しくなってくる。ミミズの行方も気になるところだ。教科書の角に 【発展】 として小さな字で、”考えてみよう” と問題提起されながら一度も議論されずに新学期を迎えてしまいそうな問題ではあるが。ところで、イカを1杯、2杯……と数えるのは、その形状が器の形に似ているからなのだそうである。ただし、あくまでも ”食材” としてイカを数えるときに使われるべきで、生きて海を泳いでいるイカはやはり1匹、2匹……と数えるものらしい。このあたりに生命の尊厳への配慮が伺われる。そういえばK山女史の証言によれば、昆虫はさらに標本になると1枚、2枚……とか、1本、2本……と数え方が変わるのだと兄上は補足されていたそうである。そのうちにメンバーの誰かが、人間も生きていれば1人、2人……なのが亡くなれば1体、2体……と数え方が変わりますねと気がついて、思わぬところで日本人が抱く死生観の一端を垣間見たような気がしたり。ふと、駅のホームに恐竜展のポスターが貼られてあって、それを観たメンバーが、「ところで恐竜は?」 と新たな一石を投じる。化石なら1体、2体……で良さそうだが、現実に生きた恐竜を数えたことのある人間はいない。果たしてチョウやミツバチと同じ様に1頭、2頭……で良いものか。あるいは、荒くれ男と同じように1匹、2匹……が良いものか。とりあえず、ネッシーは1回、2回……と数えることで合意しつつ解散。