O田女史がコツコツ貸してくれるので、『遥かなる時空の中で』 のコミックをコツコツ読んでいるわけだが、つまり普通の少女が平安時代の京都に似た異世界にタイムスリップしてしまうという元はゲームだったものをコミック化したものである。そのゲーム版 『遥かなる時空の中で3』 を攻略中の彼女は、同時に古典の 『平家物語』 を読みながら、そこに萌えポイントを発見する遊びに興じているようである。なかなか。例えば 「敦盛最期」である。  ”むずと組で、どうと落ち、取て押へて頸を掻んとて、甲を押仰けて見ければ、年十六七ばかりなるが、薄假粧して鐵醤黒也。我子の小次郎が齡程にて、容顏誠に美麗なりければ、何くに刀を立べしとも覺えず”  熊谷次郎直実はここで敦盛に萌えたんですよ、とO田女史は解説する。なるほど僕もそう思います。あるいは「先帝身投」である。  ”山鳩色の御衣にびんづら結せ給ひて、御涙におぼれ、小さく美しき御手を合せて先東を伏し拜み、伊勢大神宮に御暇申させ給ひ、其後西に向はせ給ひて、御念佛有しかば”  とあるところ、安徳帝の小さき御手に二位ノ尼時子が萌え、語り手が萌え、そして聞き手(読み手)が萌えを感じるのである。間違いなく。