宮沢湖にでも行ってみる予定だったのだが、飯能駅周辺で食事をした後も、何となくもたもたしていたせいでバスに乗り遅れてしまった。時刻もすでに午後だったのだが、バスの運行頻度は1時間に1本にも満たない様子。逃がした魚は大きいという諺があるけれども、あれはつまり手元に無いものはいくらでも虚飾を交えて大袈裟に伝えることができるから釣りキチの話は半分位に聞いておけということではなくて、こういうときにこそ使うべきものらしいよ、と妻に話しかけたりしてみるが明らかに放心状態。湖までは歩いていけない距離ではないが、しかも過去には二人で何度か歩いたことのある道のりでもあったのだが、さすがにこの炎天下では湖を見る前にこちらが干乾びてしまうだろう。
再び電車に乗って、狭山稲荷山公園あたりまで引き返してみると、そこでは何もない代わりに緑が青く、誰もいない代わりに蝉が鳴いていた。広い草原のすみに置かれたベンチのひとつに腰かけると、しきりに吹いてくる風が心地よい。アカマツを眺めながら蝉の訴えを聴いたり、うとうと眠ったり、思い出したように本を読んだり、妻と世間話をしたりしながら、黄昏れるまでそこに座りつづけた。
夜は地元の居酒屋で飲む。3千円の割引券を持っていたのだが、恐ろしくて使えなかった。