もうだめだ、今日は休もう、いやだめだ、休むなら健康なときにしよう、と何度も時計を見ながら立ち上がったり横になったりする。体の内にはまだ酒精が跋扈していて、元気に朝を迎えようとしている胃や肺や心臓の袖を引いてしきりに怠惰を勧めている。そこをなんとか起きる。霊魂とか知性とか身体とか、太古から人間を定義するための議論は限りなく繰り返されてきたわけだが、たったいま 「人間とは何か」 と問われるなら、自分はためらうことなく 「意志」 であると答えたい。シャワーを浴びて髪を洗い始めたら、全然泡が立たない。それほど汚れているのか、いったい昨夜の我が身に何が起こっていたのかと、湯水の雨に打たれつつ数秒間のあいだ激しく訝しく思い廻らせたが、ふとシャンプーの瓶の横に、空になった詰め替え用の袋が放置してある。手にとってみれば ”コンディショナー” と書いてある。どうやら妻は、詰め替え用シャンプーを買い間違えたらしい。ううう。潔く男らしく石鹸で髪を洗う。とにかく無事に出社。夕方は早めに退社して歯医者。治療はすでに大詰めを迎えており、詰め物のために型どおりに型をとって今日はここまで。