マイミクのivanさんの飼い犬であるマルティナちゃんのブログによると、アシカと犬とは非常に近い親戚なのだそうである。最近まで同じ種族だったものが、どこかで海と陸に分かれてしまったらしい。いったいどんなドラマがあったのか。世界各地の洪水伝説など思い出しながら想像を逞しくしてみる。そのうちに、オットセイは犬の仲間なのかどうか気になってきたので、mixiでマルティナちゃんの飼い主のivanさんに質問してみたところ、オットセイも犬の仲間だがアシカではないらしいという回答をいただいた。

ivanさんに紹介してもらった、”海の中道海洋生態科学館” (今度は福岡だ!)のホームページにあるマリントピックスの ”アシカとオットセイ” の項を読むと、詳しい相違点が解説された文章の最後に、

 ”当館にはオットセイはいないので、両者を見比べることはできないのですが、アシカヘの誤解が生じないためにも、違いを覚えておいてください”

と書かれてある。併せて、ivanさんからもそういうことですので誤解のなきようにと念を押されたが、「当店にはざるそばはないので、両者を見比べることはできないのですが、もりそばヘの誤解が生じないためにも、違いを覚えておいてください」 と一徹な蕎麦屋の店主によって書かれたお品書きの脚注みたいだな。

それにしても、海にもイヌがいるということでいよいよ海に対する認識も改まった感がする。もともと、海と陸(あるいは山)というのは、神代の頃から対立すべき存在とみなされてきた。古事記でいえば海幸・山幸とか、カワカミタケルにヤマトタケル百人一首なら三室の山に竜田川、中国なら呉越の争いに起源する銭塘江の潮嘯伝説とか。海と山とは対立するのが自然の成り行きなのであり、だから陸に語り継がれた物語があれば、その海賊版もあって当然のはずなのである。ずっとそう思ってきた。

そんなところにアシカ改め海の番犬の登場である。実に痛快である。海にイヌがいるならば海のサルもいるのかと思いつつふいに 『海猿』 とかいうコミックのタイトルが浮かんできたりしたがあちらの実体は陸の猿。それよりも確かにその名を冠したシーモンキーというヤツがおるではないか (だいぶスケールに問題があるが)。海のキジについては、ウミドリは何だかんだ言っても陸の世界に棲んでいるので除外するとして、海を飛ぶのだからトビウオくらいでどうか。位相幾何学的に見てもキジと同じ仲間として良いだろう。肝心の桃太郎であるが、海のモモというのがどんなものか分からぬが、海ブドウがあるくらいだから海モモも必ずあるに違いない。

むかしむかしある海にお爺さんとお婆さんが泳いでいた。ある日、いつものようにお爺さんが日本海溝に貝堀りに、お婆さんが黒潮に洗濯に出かけると、南のほうから暖かい海流に乗って大きな海モモが、どんぶらこっこ、どんぶらこっこ、流れてきた。お婆さんはその珍しい海モモを持って帰って、お爺さんと一緒に大鉈で叩き割ってみると、中から黒真珠のような男の子が出てきたので、二人とも冷や汗を拭いつつ、これに海桃太郎と名付け我が子として育てることにした。ある日、海桃太郎が誕生日に買ってもらった原色海洋図鑑をつらつら眺めていると、この平和な海にもオニヒトデというヒトデの仲間のフリをしているとしか思えない危険な生物がいることを知った。人間系の鬼なら人でなしとでも罵られるところが、ヒトデでなし! とでも罵られるべき凶悪な存在なのであろうことは名前からも容易に想像されたので、もう充分大人に成長していた海桃太郎は一念発起し、オニヒトデ退治にパラオのさんご礁へ出かけたいと両親に暇乞いをする。元をただせば黒潮に乗って流れてきた海モモの子、あるいはそれと知らず本来の故郷の匂いを感じてとったのか。お爺さんは涙というより元から海の底なので袖の乾くまもなし、お婆さんは海桃太郎にムキエビ団子を持たせて泣く泣くこれを送り出す。こうして広い外海に泳ぎ出た海桃太郎、高らかにホラガイ(オニヒトデの天敵)など吹きながら勇ましくドルフィンキックなどしていると、やがてむこうからアシカが泳いでくる。わんわん、海桃太郎さん、お腰につけたムキエビ団子をひとつ私にくださいな。あーげましょう、あげましょう、これからオニヒトデの征伐に付き随うならとムキエビ団子をひと掴みアシカにやる。オットセイではありませんからと誤解のないように念を押しながらアシカは海桃太郎の後に従いつつ海底の白砂を掻き回し泳いでいく。実はすでにシーモンキーが近くに寄ってきていたのだが誰も気づかずにやり過ごしてしまっていた。何か重大なミスを犯しているような言われの無い不安に駆られながら二人がなおも泳いでいくと、今度はトビウオが泳いできたのでこれまたいろいろあって仲間に加える。こうして、海桃太郎とアシカとトビウオの三人はやがてパラオのさんご礁に着いた。鬼というのは元々死んだ人のことを指していう言葉であるが、さしずめ鬼ヶ島とは死の島とでもいうべきか。アクアラングに水中カメラまで携えてやってきてみれば、エルニーニョ現象の影響のために魚のえさが減少したことが原因で、パラオのさんご礁の3割もが死にかけていることを知り海桃太郎は愕然とする。サンゴを主食としているオニヒトデまでもが元気がない。これでは物語も腰砕けと再び一念発起した物語の主人公は、さんご礁を中心とした生態系の回復を助けるため、パラオに国際珊瑚礁センターを設立する。こうしていまも陸の世界の人々に環境保護を訴え続ける毎日なのだったとさ。めでたしめでたし。

それにしても陸の世界の桃太郎は、なぜ突然鬼ヶ島に行くなどと言い出したのだろうか。鬼の存在をどうやって知ったのか。考えてみると不思議なのである。お婆さんのちょっとした世間話などを耳にして、青年運動家よろしく 「必ず彼奴らめを滅せねばならぬ」 と激しく思い込んでしまったのかも知れない。

mixiでオケラオーがやっと見つかる。マイミク登録する。沢崎さんにも招待状を出す。とりあえずアシカとオットセイとの関係はだいたいわかったが、そうなるとアザラシとかセイウチはどうなのか。謎と夜とは深まるばかり。