君は競馬を知っておるかね。この写真のなかではどの仔が好き? とO田女史に ”赤本” を見せつつ詰問する。立派なセクハラである。いや、じつはこれは一見すると競馬の本のようだが実は競馬の本ではないのだよ、とオレさまが話し始めたらいきなり 「馬の耳に念仏」 と一言で遮られてしまった。うーむ。こいつ、シロウトかと思えば。まあとりあえず写真見て、気になる馬がいたら教えてくれる? 昼休みにすまんね、と下手に出ながら ”赤本” をそっと渡してみると、O田女史はすぐにメジャーオブラブとかいう牝馬を指差しつつ赤本を返してきた。気に入った理由は、黒くてツヤツヤしているから。なかなか……って、これステイゴールド産駒じゃんか。ねえこれ、少し違うよね、じつは本当にフィーリングが合ったわけじゃないよね、たぶんこれは何かの間違い、面倒くさい気持はわかる、わかるけれども急がば回れとも言うじゃないか(意味不明)、ね、本当はどの馬が好きなのかよく考えてみてくれない? あ、これ? 母ルビーバーミリオン? アドマイヤベガ産駒だね! なかなか。どうしてこれが良いと思った? ……牛みたいだから……ああ、そう。

そのとき突然、オレさまの目の前に、いかりや長介が降りてきて、天使の羽根を背中に羽ばたかせながら、だめだこりゃ、とだけいってまた天国へ帰っていった。