こんな天気の日には気分も不安定になる。外には出ずに、部屋にこもって本を読む。
昨日買った新書に目を通しつつ、山本夏彦の散文を読んだり、中島敦の 『山月記』 や
『文字禍』 を読み返してみたり、ときどき眠って夢をみたり、また目を覚まして
古代の人々の生活を想像してみたり、またうとうとしてみたり、時が経つにつれてずるずると
異空間へ引き摺り込まれていくような錯覚に陥る。体調はそのうち良くなるどころか、
昨日よりいっそう悪くなったようだ。

眠っては目を覚ますたびに、外の雨音が強くなっていった。風も吹いているようだった。
家の中だけが静まりかえっている。妻も、一緒にコタツに入って、寝たり起きたりしている。
世間という名の床板を踏み外し、夫婦ともども奈落の底へ転落していくような、
得も言われぬこころ細さである。

擲銭法を用いて、また現在の健康状態を占ってみた。
百円玉3枚を6回投げて出た卦は、「山沢損(さんたくそん)」 だった。
これは決して悪くない卦だ。損しているようだが結果として良いという意味を持っている。
六四と上九に変爻が現れたが、この場合は上位の六四の爻辞を採用することにした。
つまり、”其の疾を損す。もし速やかなれば喜び有り。咎なし。”
病気の勢いが弱まり体力が回復するから早めに治療をせよということであるか。
しかも、この卦は腹痛にも関連するらしい。不思議なものである。

気がつくと、夕方も6時を回っていた。
妻は起き出して夕餉の支度をし、オレさまは風呂を洗った。