Y成君、Y成夫人、Y山さん、M川女史、MEG、オケラオー、
そしてオレさまの7人が府中競馬場の広々とした内馬場に集合する。

昨日からの雨も止み、晴れはしたが空気は冷たくしかも風が強く、
束ねたマークカードも、ヨレヨレのスポーツ新聞も、ビールの紙コップも、
常に見張っていないと勝手に何処かへ飛んでいってしまうようだった。

いつものようにMEGは、早いうちから9Rまでの投票を済ませて、
シートに座り込んで、新聞紙とマークカードの子守をした。

Y成君も、Y成夫人も、二人ともラーメンを食べたり、串焼きを食べたり、
また別のラーメンを食べたりして、ハングリーさをアピールしていた。

M川女史は、皆と一緒に内馬場をうろうろしていた割には、
ビニールシートにビールをこぼしたり、馬券を買いに行ったのに
すっかり買い忘れて帰ってきたりしながら不経済な休日を過ごしていた。

午後から参戦したオレさまは、ガスコンロの青い炎のような闘志で、
ワイド馬券を何度か的中させて、珍しくダメージが少ない状態で
最終レースを終えた。

そんなオレさまの地味な健闘をよそに、二日酔いで遅参したオケラオーは、
わずかな時間のあいだに2回も3連単を的中させてあっという間に巨万の富を築いた。

ずっとブツブツ言っていたY山さんも、京都の最終Rで過去のCOT指名馬を
組み合わせたBOX馬券を10点買って 「濡れ手に粟」 の仕事をした。

やがて夕日が黄金色に輝き、さざ波のようにそよぐ芝生の丘が、
どこまでも遠くに広がっていくような幻想的な光景を背に、
荒野の7人は府中競馬場を後にした。

新宿での祝勝会は盛大なものになった。
オレさまが卵焼きを注文しようとすると、オケラオーが特製刺身盛り合わせや、
タラバガニの焼いたヤツを、じゃんじゃん注文してご馳走してくれた。
皆でご馳走を頬張りながら、馬の骨折の話や、歴代ダービー馬の話をした。

新妻のY成夫人は、ときどきお色直しに出かけては、
なかなか帰ってこなかった。

オレンジグレープサワーばかり注文したMEGは、
婦人警官のように、オレンジ半分とグレープフルーツ半分を徹底的に絞り上げた。
次に生まれ変わることがあるとしても、グレープフルーツの半身にだけは
生まれてくるのを避けようと思った。

Y成君は、イカのことをフランス語で 「アシジュポーン」 というのだと
教えてくれた。ではタコは? と重ねて質問すると、それは 「アシハポーン」
というのだと懇切丁寧に教えてくれた。