妻が体調を崩してしまい、いろいろ検討した結果会社を休むことにした。
午前中は、家事にだいぶ振り回されたが、午後から時間が空いてしまったので、
近頃サビが目立ってきた自転車にペンキを塗ってやる事にした。

以前に濡れ縁を塗ったときのペンキが余っていたのを思い出して、
さっそく納戸から引っ張り出してきた。オレさまが好きな感じの茶色である。
ペンキが固まって蓋が開かない。これをこじ開けるのに約30分を要した。

塗り始めてみるとなかなか楽しい。荷台の部分やハンドルの、元々黒色だった部分を
ストーンズの ”PAINT IT BROWN ”を口ずさみながら丁寧に茶色で塗りこめていく。
じつはすぐに気がついたことなのだが、茶色というのは錆の色にとても似ている。
塗れば塗るほど自転車がサビていくようで、ますますボロ自転車あるいは盗難車に
思われてしまいそうである。これに乗るのはちょっと恥ずかしい気さえする。

それでも、今更ほかの色には変えられない。新しいペンキを買いに行くには、
現在使っている筆やペンキや新聞紙を片付けなければならないし、なにしろ
いままでの作業が無駄になる(いわゆる ”コンコルドの誤り” というやつだ)
だから茶色のペンキを塗り続けたのである。まさしく恥の上塗りである。

自転車にサビを塗り終わったところで、まだ道具を片付けるのが面倒だったので、
今度は家の出窓の格子を塗ってみることにした。これを始めたのが間違いだった。
これまた途中でやめる事が出来ず、しかも遅々として捗らず、暗くなるまで寒い場所で
ペンキ塗りをするハメになった。本でも読んでいればよかったのだ。

夕食後、『紅の豚』 を観ながら、明日の馬券を予想する。

 ”トばない本命馬は、ただの本命馬だ”

などと言ってみる。妻はゲホゲホ言って答える。