午前中は来客。午後から病院へ行って母を見舞う。今回の騒動を踏まえ、あらためて
退院時期について脳外科の医師と話し合う。母は引き続き即日の退院を強く希望。
しかしながら主治医の診断は変わらない。妥協案として、どうにか1時間の外出許可を
いただく。母は嬉々として杖をとる。

母を連れて、病院の近くを少し歩く。
以前から、雪舟の 『慧可断臂図』 の慧可の姿を見るたびに、何かに似ていると思っ
ていたのだが、ようやくそれが、脳梗塞で左半身が不随意となった母の姿だったという
ことに気がついた。しかしながら、わざわざ健康な腕を自ら切り落とした慧可の行動は、
やはり狂気の沙汰としか思えない。紙一重の母でさえ嘲笑しそうな愚行です。良い子は
絶対に真似をしてはいけません。

雨が降って来たので傘を買う。
母が脳梗塞で入院するのは2度目である。3年前に入院していたときに外出許可を
もらって連れて行ったファミリーレストランが、いつの間にかスーパーマーケットに
変わっていた。雨の中をしばらくのろのろ歩いて、やっと小さな食堂を見つける。
母はそこで当たり前のようにきつねソバを食べた。

病院とは1時間の約束だったが、それを30分もオーバーして病院にもどる。
凱旋将軍のように意気揚揚と、看護婦さん達に手を振りながら病室に戻った母に、
これで気が済んだよなと念を押し、美人の看護婦さんたちに挨拶してから、
とぼとぼ帰ってくる。