朝、病院から電話。脳梗塞で入院中の母が昨晩、病棟を脱走しようとしたらしい。
運良くエレベータの手前で看護婦さんが捕まえてくれたのだそうだが、
外出着に着替えていたので普通の見舞い客にまぎれて危うく見逃すところだったそうだ。
あきらかに計画的な犯行である。

職場に連絡して、午後から出社することを告げ、着替えて病院へ向う。
9時頃に病院に着いてみると、母は余所行きの格好でベッドに腰掛けて待っていた。
すぐに医師と看護婦と患者とその息子で面談。患者が全快したことを強く主張する。
確かに、療養生活に倦み始めたということは、要するに元気になってきたという
証拠ではある。しかし病院側は、薬のアレルギーによる合併症を引き起こして
いて未だ治療途中であることを根気よく説明。母は鼻で笑っている。

双方一歩も退かぬまま膠着状態が続いた。オレさまは大変な工数の無駄遣いだと焦る。
しかし、よくよく母の話を聞いてみると、どうやら点滴治療が痛くて嫌なのだという
ことがぼんやりとだが判ってきた。老いてくると皮膚が硬くなったりすることもあって、
針が通りにくいことしばしばであるという。針の落とし所に看護婦が悩むのを見て、
余計に痛みが増すらしい。そういうわけで点滴治療を一時的に注射に切り替えることで
なんとか全体の合意が得られた。患者は泰然と病室に戻る。

病人の洗濯物などを済ませてから出社。
出社してみると、戦々恐々とした職場がオードリーペプバーン邸の庭園のような、
鮮やかに花咲き乱れる楽園に思えた。思い切り残業して羽根を伸ばすつもりだったが、
この週末に大地震があるらしいというウワサを聞いているうちに頭が痛くなってきた
ので適当に退社。疲れた。