オレさまの隣に座っている、なんでも先輩にオススメすればいいと思っ
ているO田女史が近頃落ち着かないのは、本日発売のDVDのことが
気になっているからである。

どうせファイナルファンタジーだろうと思ったら、やはりファイナル
ファンタジーだった。どうして彼女はこうもファイナルファンタジー
なのだろう。すでに予約済みで、今晩自宅に届くのを待つだけだと言っ
ているから、大人しく待っていれば良いのに、朝から、あんたもこの
DVDを観ろ、絶対観ろ、観ろ〜、と騒々しい。

「興味ないから」

というのがオレさまのファナルアンサーである。
それでは自分が観終ったら次に貸してやるからとにかく観ろ、
と彼女はあきらめない。観ろ、観ろって、きみはミロのビーナスか。

まあ、しかしだ。オレさまもかつてはFFVIIに感動した。懐かしいな。
懐かしいユフィにもう一度逢いたい。もう一度あの森で彼女に逢って、
もう一度まんまと一杯食わされたい。今度逢えたら、彼女の好きなだけ
マテリアをあげよう。まあ、クラウドのだけれどな。あげよう。

DVDで思い出した!
ドラえもんのび太のパラレル西遊記』 をO谷君に借りっ放しだ。
大急ぎで観てしまわなければ。

定時で帰宅後、スポーツクラブへ行く。
通い始めて1ヶ月、オレさまはもう夜のジムのヌシを見分けることが
できた。彼はおそらくまだ若い。20代前半と思われる。誰よりも勤勉
にジムに通い、誰よりもハードなメニューをこなしている。なにしろ、
オレさまが行くと必ず居る。たいがいランニングマシンで全力疾走して
いる。やがて走り汗だくになったところでベルトコンベアから降りて、
最も重い負荷でウェイトトレーニングを始める。その後ろ姿はまるで
鉄板を売り歩く行商人みたいだ。さもなくばチョコレート工場の職人。
しかも無口。他の人達は適当に馴れ合っているのに。彼はモクモクと
鉄板や鉄アレイを上げ下げしている。カッコイイ。

オレさまが自分のトレーニングでへとへとになった頃、ふと彼の姿を
探してみると、またランニングマシンで全力疾走していたりする。
そんな彼の後ろ姿を眺めながら、オレさまはいつも心の中でお先に失礼
しますと言っているわけで、彼がその後どのくらい運動するのかは
知らない。たぶん夜中までやって、そのままマットの上で寝るのだと思う。