体育館に高校生を整列させて、「がんばってくれたまえ」 と、
一人一人激励しながら握手してまわる夢を見た。
彼らに何を頑張ってもらおうとしていたのかがよく思い出せない。

朝6時半に起床。ややだるい。二日酔いぎみか。
でも吐き気も、頭痛もしないのは、やはり飲んだのが焼酎だったおかげか。

それよりも肩こりが酷くて往生する。
首筋をさすりながら食卓に行ってみれば、妻がすでに食事中だった。
オハヨーと声を出した瞬間に、周囲にお酒の香気が広がる。
妻は黙ってくるみパンを齧りながら、マリリン・モンローの映画を観ている。

朝からマリリン・モンローか、と呆れながら、側にあった牛乳をごくごく飲む。
ニュースとか、天気予報とか見たいのだが、妻の無言の圧力に押され気味。
いまの自分は牛乳をごくごく飲むしか能のない赤子だ。

9時に出社して、真面目に働いていると、M川女史やO谷君がやってきて、
本当に競馬をやめるつもりですか、と聞いてくるので、もちろんだと答える。
きっぱり足を洗う。手も洗うし顔も洗う。1年後には晴れて競馬のない生活者だ。
人間には不可能なことなどないのだ。

定時で退社。
帰りの車中で、『「ツキ」と「実力」の法則』 という、
将棋棋士谷川浩司社会学者の谷岡一郎の対談集を読む。
だいぶ以前に購入してあったものだ。例えば谷川のこんな言葉に感銘を受ける。

 ”阪神・淡路大震災のときは本当に、自分が将棋の棋士であることなど
  何の役にも立たないということを実感させられました。”
                 (『「ツキ」と「実力」の法則』 PHP文庫)

プロ棋士であるという強い自覚がなければ、こんな懺悔が口をついて出てくる
こともないだろう。谷川名人は、この震災以来、自分が社会に対して何ができる
のかを考えるようになったのだそうだ。そういう棋士がどれだけいるだろうか。
棋士に限らず、社会に対して何ができるか、を一度も模索したことのない人間は、
そのあまりにも独善的な想像力を反省せねばならないだろう。

19時半頃に帰宅。
このところ、『フランケンシュタイン』 ときて 『魔王』 ときたものだから、
久しぶりにミルトンの 『失楽園』 など読みたくなってしまい、書棚に置いてある
岩波文庫をぱっと開いたら、いきなりダニみたいな小さな虫が2匹、ささささ、
と紙面の上を高速で走った。ぞぞぞぞとする。本を置いて、どうしたものかと思い
あぐねていたら、じきに虫たちの姿は消えてしまった。おお、神よ!

慌ててネットで調べてみると、どうやら彼らはチャタテムシと呼ばれているらしい。
タツムリを幼児に発音させたような名前のこのムシの存在は、しかし人体には
無害ということのようなので、今後は仲良くしてやることにする。
もしも今度見かけたら、そーっとティッシュに包んで潰してあげよう。
ふふふ、きっと歓ぶぞう。