Y成君主催の魔王会。浅草橋の 『ごち屋』 。
目的は 『魔王』 を飲むことである。魔王のロック(聖飢魔IIみたいだな)が
600円で飲める店を発見したというので、一度連れて行ってみろといったら、
セッティングしてくれた。メンバーは、Y成君、O野さん、AYAちゃん、
MEGちゃん、NAOちゃん、オレさまの6名である。

『ごち屋』 は、浅草橋の駅から徒歩でどんなにゆっくり歩いても1分。
敷地面積は小さく、店の中は沢山の乙類焼酎の一升瓶が所狭しと置かれている。
確かに、期待させる何かがそこにはあった。

最初にうっかりビールを注文してしまった。遺憾な、つい乗せられてしまった。
『魔王』 を飲むなら、最初の1杯目にこそ行くべきだったのだ。
少々焦りながら、せっせとビールを消費する。

一番早くビールを飲み干したAYAちゃんが 『魔王』 のロックを注文。
続いてY成君も、こちらは割り水をした 『魔王』 を注文した。

オオオオレの、オレの、オレの魔王だ、オレより先に飲むな! 
と心の中で叫びながら、大急ぎでビールを飲み干し、すぐ 『魔王』 を注文する。
『魔王』 が来る。

  ”お父さんそこに見えないの? 魔王がいる、こわいよ”
                     (シューベルト 『魔王』 より)

やや小ぶりなコップに角氷を詰めたところへ、半分ほどの位置まで焼酎が注がれている。
まずまずか。しかし、やはりオレさまの地元にある行きつけの居酒屋のサービスには
適わぬようだ。それでも嬉しい。とにかく 『魔王』 を飲むのは1年ぶりくらいだ。

  ”かわいい坊や、おいでよ。おもしろい遊びをしよう……”
                     (シューベルト 『魔王』 より)

『魔王』 は1杯だけにして、次からは 『黒霧島』 をがぶがぶ飲んだ。
安いけれども、これはこれで旨いと思う。コップも 『魔王』 のより大きめだった。
店側もそれなりに計算しているようだ。

Y成君がオヤジギャグを連発してくれるおかげで、
オレさまは今回も、キャラを捨てて、聞き酒に集中できた。
それでも、Y成君3:オレさま1、くらいの割合でついオヤジギャグが出てしまう。
この自らの業を恨めしく思う。荒川の土手で他校の学生を殴ってしまったときの
ゴリラーマンのあの悲しそうな表情が、胸に浮かんでは消えた。

黒霧島』 のコップを抱いて落ち込んでいると、社会人1年目のNAOちゃんが、
あたしオヤジギャグ好きですよう、と爽やかな声音でフォローしてくれた。
多少は救われたような気分になる。しかし、そこで調子に乗ってしまうような、
無神経なオレさまではない。

「あまり前髪を伸ばしすぎると、前が見えなくなちゃうよ」

とだけコメントして、あとはオヤジギャグを控えながら適度にさわぐ。
楽しいお酒だったな。