トゥザビクトリー03の件で思い悩み、浅い眠りで目が覚めた。
まだ間に合うかも知れないので、週明けにも事務局のY成君に相談してみることにする。
できればキャプテンベガか何かと取り替えてもらえると有難いのだが。

この週末は、雨が降るぞ、降るぞ、必ず降るぞ、お天気は思いきり下り坂だぞと、
さんざん天気予報に脅されていたのに、朝からとても晴れやかな空模様である。
いったいどうなっておるのか。どうなっておるのかトゥザビクトリーの03は。

太陽はすでに天空を意気揚揚と駆け上がりはじめていたわけであるが、
反対にオレさまの気分のほうは、トゥザビクトリー03のおかげもあって、
迂闊にじっとしていると、底なし沼にハマったようにどこまでも沈んで行って
しまいそうなので、午前中から妻を伴って出かける。

そもそも明日のCOTドラフトに備えて、膨大な資料の研究に没頭しなければ
ならないはずだったのだが、2歳馬のリストを見るだけで、トゥザビクトリー03の
行方のことが気になってしまうので、ここはとにかく気分転換を必要とする。

池袋から山手線に乗り換えて、原宿駅で降りる。
原宿で降りるなど年に1度あるかないかという点では皇室の方々と同じ境遇である。
表参道のけやき並木の下を、ふらふらと歩いてみたが、同潤会青山アパートの建て替え
作業のおかげで、コンクリートの匂いしかしない。都会だなあ、と感心してみる。

やがて青山通りをうろうろしつつ、意外とあっさりとワタリウム美術館を発見する。
岡倉天心展』 というのが開催されており、新聞屋に招待券を3枚もらっていたので、
期待半分で訪問してみたわけである。そもそもワタリウム美術館なんて聞いたことが
ないや、と思っていたのだが、やはり小さな美術館(?)だった。もらった3枚の招待券
のうち1枚はH賀ちゃんにあげたのだが、彼女は2週間くらい前にすでに観賞を済ませ
ていて、来るまでにだいぶ道に迷ったらしい。確かに外観はちょっと美術館らしくない。

岡倉天心といえば、オレさまの頭の中では、怪僧ラスプーチンに負けないほどの
いかがわしい人物なのであるが、それはあくまでもイメージであって、その実体は、
近代化と称される西洋ハシカから日本の伝統美術を守った、美術史上の英雄である。
それでも、岡倉天心といえば、オレさまの頭の中では、鉄道少年だの、切手マニアだの、
昆虫博士だの、恐竜博士だのといった、小学校時代には必ずいたちょっと偏りの激しい
少年というイメージがある。

「ねえ、ねえ、救世観音ってすごいよね」

とか言いながら、背後から忍び寄ってきそうな雰囲気がある。
オレさまとしては嫌いではないのだけれど、それよりドッジボールのほうが面白いと
思いながら、生返事で応対したくなるような相手である。

まあ、いいか。

ワタリウム美術館はとにかく狭いのが残念だった。1Fのミュージアムショップには、
たくさんの絵葉書が売られていて、これはこれで、眺めていて楽しかった。

昼過ぎに美術館を出たところで、空腹を覚えたので、
青山通りを神宮方面にひたすら歩いていったところで、周富徳の中華飯店を見つけたので
とにかくそこに入ることにする。オレさまは豚肉糸スープそば、妻は豚肉糸焼きそば、
それからフカヒレの点心を注文する。点心を注文したのは、もちろん岡倉天心を記念して
のことである。夫婦の利点は分け合えることであるが、焼きそばもスープそばもとても
美味しくいただきました。

空腹も満たされたので、再び散歩モードに切り替えて歩く。とにかく天気が良い。
気分が良いので、易経古事記の関係について、延々と妻に説明しながら歩く。
やがて、テニスボールの跳ねる音を聴きながら、いつものイチョウ並木を聖徳記念絵画館
の方にはいっていく。聖徳記念絵画館というところは、一度は観賞してみたいのだが、
今日も時間の関係で近くを通るだけに思いとどまる。いちおう建物の周囲を一周してみた。

千駄ヶ谷駅のガードをくぐりぬけ、新宿御苑に入る。絶滅危惧植物展だかなんだかで、
幸運なことに入場料が無料になっていた。妻と手を繋いで堂々と入園する。
バラ園の周りには、出航する外遊船を橋桁から紙テープで見送る人々のように、
散り行く花の前で未練がましく繰り返しシャッターを切るおじさん達やおばさん達が
集まっていた。木陰を選らんで散歩しつつ、ビワの木の側のベンチに座って子供達が
遊んでいるのを眺めたりした。どこまでも青い芝生が広がっている遥か向こう側に、
背の高いビルが立ち並んでいるのが見えた。

新宿駅から電車に乗って池袋まで戻る。
スターバックスでコーヒーを飲み、本屋でハリーポッターの最新刊を予約する。