昨日録画しておいた『ウィニング競馬』を再生してみる。

グッドネイバー!  ○| ̄|_

風船につめた期待を思うだけ膨らまさせておいて、あっさり惨敗か。
本当にわざとやっているとしか思えない。これほどまでに翻弄された馬は 過去に関わってきた指名馬たちの中にもいない。しかもこれが1位指名のSS産駒なのだからな。

思えば今を遡ること5ヶ月前、武(やる気なし)豊を背に、 人気も着順もグランロワイヤルごときにハナ差で抑えられたままで終わった屈辱のデビュー戦のあと、 次走は確勝ですねなどと世間にもてはやされつつ、信じて迎えた1番人気の未勝利戦がまさかの3着。 勝ち馬との着差0秒0とはいえ、2着は確実と思っていただけに激しいダメージを受けてしばし泥だらけの地面にうつ伏したまま起き上がることができず。 続く3戦目は、ディープインパクトのデビュー戦で2着だったコンゴウリキシオーが混じってきた。なんだそんなヤツ。 蹴散らしてくれる。派手にぶち負かせて近頃生意気なディープインパクトとやらのトモをガクガク言わせてやりなさい、という気概がまだあった頃の話で、 もちろん1番人気の座は譲らなかったわけだけれども、ウィナーズサークルのほうはあっさり譲ってしまった不甲斐なさ。 このあたりでオレさまもさすがに気づき始めていたわけであるが、さらにこのときの武(インチキ)豊のコメントが 「どうしたのかなあ」で、オレさまの怒りは頂点に達するかと思われたがむしろ完全なる脱力状態になってしまった。 もはや興は覚めた。さようならグッドネイバー、おわかれだグッドバイバイ、と引導を渡したつもりだったが、 3度目の未勝利挑戦でアンカツに乗り替わったかと思うとこれがあっさり未勝利を脱出してしまったのに驚かされる。別れたとたんに美女に変貌。 さては騎手に問題があったのか武(二度と乗せるものか)豊め……今までの恨みは骨髄にまで達しておるけれども、 そこを血と汗と涙と水に流して新たな希望に胸を膨らませたまだ冷え込みの厳しい2月の初め、 さて次はどうしたものかとソワソワしていたら、なんとすみれSに出走した。果敢にも格上のオープンに挑戦するですか。 やれる。そのくらいはやれる器だ。大器は遅れてやってくるものだ。勝て。派手に勝ってディープインパクトの影を限りなく透明に近くなるまで薄めてやりなさい。 世間が辛くも4番人気程度に評価するなか、すみれSに殴りこんだグッドネイバーは惜しくも(オレさまの心の中では)惜しくも2着だった。 なぜ勝ってしまわなかったのかと、世界中のPOがそれから4、5日の間ずっと地団駄を踏み続けたがために、首都圏各地に地震速報が誤って流れてしまったほどだった。 3月に入るといよいよクラシックのファンファーレが遠くに聞こえはじめ、ディープインパクト弥生賞を含む3連勝で 世間の耳目と賞賛と期待と愛と忍耐と罵倒と反省を一身に集めているその影で密かに必殺の蹄を研ぐグッドネイバーは、若葉ステークスへの出走権をかけた抽選を、 薄氷を踏み鳴らしながらパスすると、POとしてはそのまま勝ったような気分になる熱気を冷静に冷静に冷やしながら、2着でいい、2着でいいから、 と落ち着いて見守りつつ走らせてみれば3着。また3着。3着では皐月賞に出走できないことを知らんのかっ、とテレビに向かって叫びたい気持ちを、 またまたよくよく考え直して辛うじて思いとどまり、仮に皐月賞に出走が叶ったとしても本賞金は400万のままなのだから、 もし皐月賞で4着までに入線できなければまた振り出しに戻ってしまうわけで、それならばむしろ自己条件→TR戦→ダービーという 地道だけれども堅実なローテーションが組めることをここは喜ぶべきなのかも知れない。そういう意味でひとまず脚を測ったものと受け止めてみれば 3着とはいかにも絶妙な着順であるとさえ言えるかも知れない。などと噛んで言い含めるように自分自身に言い聞かせたのである。 そうして慎重に選んだはずのアザレア賞。望みどおりの自己条件。想像したとおりの実力と実績に裏づけされた1番人気が昨日だった。 絶対に勝たねばならなかったはずだ。
はずだったのに!

うーむ。疲れた。とても疲れた。
思い出すのにも疲れたが、思い出してみたらまたどっと疲れた。
もう今度こそ、別れなければならない。これ以上翻弄されてはこの身が持たない。
ああ、でも翻弄されたい。ペーパーオーナーはすべからく翻弄されたい存在なのだ。

午後は、大作君にさそわれて、家族で花見をすることにした。
大作君たちが先に場所取りをしてくれているというので、光が丘駅の公衆電話から彼の携帯電話に連絡して場所を確認する。 ”わかば” とか書かれた幕の近くにビニールシートを拡げていますから、と言うのだが、広い海の真ん中でイルカの背びれを目印に したようなもので、とても合流できる気がしない。

光が丘公園に入っていきなり迷子を1名保護、すみやかに公園の管理事務所まで誘導する。
先を急ぐ身ではあったが、放っておけなかった。なにしろ今日は特別に気持ちよく過ごしたい日だからな。 だからベンチに座っていたときにも見知らぬ飼い犬に左手をベロベロ舐められたのを好きなようにさせておいたし、 練馬駅のホームに立っていたおばさんの帽子が風に飛ばされて線路に落ちたときには、すぐに駅員を呼んで 例のマジックハンドで拾ってもらったのである。そうすることで善徳のポイントを稼いで、 桜花賞という厄災を無事にやり過ごしたいと願っていた。

どこまでも広い公園内のここかしこ、無限に広がる桜の枝はいずれも見事に満開だった。
ただ思ったよりも風が強く、舞い上がる砂ぼこりが見えるはずの樹々の幹を絶えず覆い隠し続けていた。

どうやら花見に混じってフリーマーケットなんぞやっておるようで、大作君たちを探すのが余計にやっかいである。 こういうときには携帯電話があると便利かも知れない、などと考えながらうろうろしていたら、 向こうのほうから見つけてくれた。やっぱり携帯電話なんか要らない。

持ってきたビールを開けて乾杯。ビールや日本酒やビールや日本酒や日本酒。
昨夜の酒がまだ体内に残っていたはずだが、本日の花見酒と混濁して、一種独特の味わいを醸しはじめた。 時折舞い上がる強風がまた一興。油断するとコップの中に砂や花びらが入ってくるところがなによりの風流。 円座の中央に据えられたお弁当のメニューは、唐揚げの砂まぶし、卵焼きの桜あえ、枝豆の枯葉添え、など、 どれも食欲をそそる逸品揃いである。美しきかな日本。

フェリシアのPOである大作君は、
勝てとはいわないまでも4位くらいに入着してくれればとても助かると言っていた。
そうだな、この馬だって重賞を勝ってるんだからな、と適当に相槌を打ちながら、

「でも4ヶ月の休養明けでは難しいよ」

と、余計な期待を持つことで余計に落ち込むことのないように、
これでも善意から、忌憚のない意見を述べさせてもらった。

それから、ディープインパクトは絶対にダービーは勝てないから安心せよと、
酔った勢いも手伝って断言してみせると、そこまで言い切りますか、と大作君は半信半疑なので、

「そこでローゼンクロイツですよ」

と、要らぬことまで口走ってしまった。
もうこうなったら何が何でも走ってもらうからなローゼンクロイツ

日が暮れる前にビニールシートを畳んで解散。家族で電車に乗って帰途につく。

帰宅後、録画しておいた 『スーパー競馬』 を再生してみる。
ラインクラフトはよく頑張ってくれた。シーザリオも強かった。クラシックらしい良いレースだった。
アンブロワーズライラプスペニーホイッスルフェリシアなどPO関係の馬たちは、 いずれもそろって着外だった。ほっとした。

そのあと風呂に入って、お湯で髪を流したら頭の中から泥水がわんさか出てきた。
のけぞるほど吃驚する。