会議や連絡というときにofficeツールやメールを使うことが多くなったせいか、近頃は、人の手によって描かれた図や文字に出会うと、妙に艶めかしさを伴って迫ってくるような気がする。「肉筆」といい「肉声」といい、今さらながら何という生臭い表現かと思う。そのうちに、人前で声を発することや、文字や絵を書くことや、場合によっては考えを述べることに対してさえも、何か公序良俗に反することをしているような、微かな羞恥や罪悪感を伴うようになるのではないか。
「殿方の前ですよ、キーボードをお使いなさい」と、たしなめたりとか。「と、隣の部屋のホワイトボード使っていいから。図を描いて考えてみるといいよ。だ、大丈夫、誰も見ないから……」俯いてメガネを上げる仕草をしたり。まあ、いいか。楽しそうだな。まあ、いいか。
そうすると遠くない将来には、ダースベーダーのマスクのようなものがファッションアイテムとして普通に売られるようになるかも知れないな。ビジネスチャンスがこんなところに転がっていたか。とりあえず女性用マスクの開発に着手しよう……などと思っていたら、最近は伊達マスクとかいうものが流行っているらしい。まあ、いいか。