紙コップ式自動販売機が職場の一角に設置されている。この自販機ではコーラやジュースを購入するときに「氷なし」ボタンを押せるようになっているのだが、じつは「氷なし」を押して購入しても、普通に氷入りで購入した場合と同じ水位が保たれたまま出てくることに早くから気づいていた。
『できれば人より賢くなりなさい。しかしそれを人に知らせてはいけない』 by チェスタフィールド
やはり日頃から観察力は鍛えておくものだなと、毎回「氷なし」ボタンを押しては、静かに泡が立ち昇るコーラの水面を見つめながら謂われのない優越感に浸っていたりしたのだが、ふいに今日、別の可能性について気がついてしまった。すなわち両者の水位は、コーラの原液を炭酸水や水で薄めたのちに氷を少し浮かべるか、あるいは原液を薄めるための水(あるいは炭酸水)を通常より少し多めに入れるか、ただそれだけの違いに過ぎないから違わないのに違いないような気がしてしまったのだ。
『信仰は、見えざるものへの愛、不可能なもの、ありそうにないものへの信頼である』 by ゲーテ
実際にその味を比べてみれば分かるはずだ。試しに両方とも購入して、両手で代わる代わる味わってみれば良いだろう。ただし1台しかない自販機で、氷のあるほうを先に買ってしまうと、次に「氷なし」で買っているうちに前者の氷が溶けてしまわないとも限らないから、まず先に「氷なし」で購入してから……ていうか、どうでも良いことだ。どうでも良いことなのである。ああガリレオあたりと差し向かいで一杯やりたい気分だ。
『すべての悲運の中においても、最も大なる不幸は、昔幸福なりしことなり』 by ホラティウス