『白い人』の後半で主人公が、ナチズムとは政治であり政治は常に無名のままの集団を相手にするものだ、というようなことを述べる。ただ一人の英雄や、ただ一人の犠牲者は、人の心を集めやすいからだ。ところで、白土三平の『ワタリ』によると、上忍(忍者社会の支配層)とは姿も無く匂いも無く色も無い(「三無忍」)正体不明の存在なのだという。支配する側も無名であるほうが都合が良いということらしい。どちらも要するにネット社会でのやり方ではないか。