出家とその弟子』読了。読書会に参加するため慌てて読んだ。出家とその弟子とはたぶん親鸞唯円のことなのだと思うが、キリスト教の影響が多分にみられて違和感を覚えるところも少しある。作者が26歳(1918)のときの作品だそうで、発表当時は青年達のあいだで必読の書とさえ言わるほど評判になったそうだが、もしかすると当時の若者にとっては、仏教よりもキリスト教のほうがより身近なものだったのかも知れない。明治維新から50年を経て廃仏毀釈と西欧化が浸透したか。
実際の親鸞については、実際の唯円が残したとされる『歎異抄』や、親鸞自身の手による『教行信証』を読むのがよさそうだが、倉田百三描くところのキリスト教だか仏教だかよくわからない世界の親鸞は何者なのかよくわからない。宗教家のようでも、哲学者のようでもなく、あえて言うならばやはり文学者だろうか。