心頭滅却しかける

午前中にもウォーキングをしたのに、昼寝を挟んで、午後もまた散歩がてらに二人で平林寺まで歩いた。散歩がてらと言いながら2時間は歩いたと思う。歩いて、歩いて、まぶしいほど真っ赤に燃えあがるんだ。そして、あとにはまっ白な灰だけがのこる…燃えかすなんかのこりやしない…まっ白な灰だけだ。ノーガード戦法みたいに両腕をブラブラさせながら歩いていたせいで、すっかり矢吹ジョーモードになりながら、力石徹の厳しい減量までは真似するつもりはなかったので、自動販売機を見つけては冷たい天然水を買い足しながら、ようやく平林寺に辿りついてみると、掃き清められた広い境内には誰もいない。美しい茅葺のお堂のそばで、蝉だけが一心に鳴いている。静かだ。尽尽法師が美味しいよう美味しいよう騒いでいるのに静かだ。散在するベンチの一つに腰をかけてしばらく休憩。

妻は近ごろ、他の生き物と魂を交換する練習をしているらしい。モミジの青葉にしがみつく蝉をじっと眺めている。目の前の蝉と入れ替わって、こちらを見上げている自分の姿を観ているのだそうである。

帰り道はバスで10分。スーパーマーケットで買い物をしてから帰宅。JRAのホームページにアクセスして、気になっていた札幌3R新馬戦のVTRを再生してみる。10位で指名したギリギリヒーローが、逃げ粘る先行馬を大外から豪快に差し切って快勝した。最終着順を確認し、台所へ行ってアイスミルクコーヒーを作り、飲みながらまたレースを再生してみる。それからトイレに行って、ペーパーロールを補充し、またVTRを再生してみる。それからギターを出して、レッド・ツェッペリンの『ブラック・ドッグ』のリフをしばらく掻き鳴らしてから、また再生してみる。