深夜0時30分に、やや大き目の地震があったが、鎮まったところでまた眠ってしまう。次に目が覚めたのは5時頃だった。それから寝付かれず、かといって完全に起きる気にもなれず、少し本を読んだりしていたはずだったが、いつしか目が覚めてみたら6時半だった。

一日中不機嫌だった。ナイフみたいに尖っては触るものをみな傷つけた。もしも自分が何かの換算係数だったとしたら、たぶん 3分の1とか、7分の1とか、1よりも小さくて割り切れない数字だったに違いない。いまの自分を救えるのは、ラッキーセブンのポール牧か、世界のナベアツだけである。

帰宅後、夫婦一斉に夕食に取りかかろうとしたら、タイミングよく妻に電話がかかってきた。そのまま長話しモードに突入である。行儀の悪いことではある。箸を右手に取ったまま少しだけ待ってみたが一向に終わる気配がないので、もともと不機嫌なこちらとしては望むところ、自由と平等と白米の精神で一人気ままに食べ始めざるを得ない。ようやく妻の不毛な会話が終わる頃には、こちらの茶碗も漆器も皿も空しくなってしまっていた。

のろのろと悪びれもせず夕食を摂り始めた妻に向かって、「食事中すまないが頭に何か生き物を思い浮かべなさい」、と指示を出す。それから、その思い浮かべたもののイメージをテレパシーで私の脳に送ってみなさい、とさらに続けて指示を出す。妻が訝しげな表情をしているので、もう一度その指示内容を繰り返して伝えると、「いまもう送った」 とかいうので、慌てて頭の中をまさぐるような感じで視線を宙に泳がせつつ、「シロクマだね」 と受信した内容を確認する。あっさりと否定されたので、「クジラか!」 と声を高めてみたりするがどうもそれも違う。うーむ。彼女のイメージしたものはどうやら 「金魚」 だったらしい。あたりまえのようにジブリの影響を受けている。まあ、いいか。とにかく、かほどに相手の気持を汲んでみるということは難しいのである、わかりましたね、とさっさと訓戒を締めくくる。