ちょっとした理由があって、O田女史がチームの皆にクッキーを焼いてきてくれたので、有難くほおばりながら 「長靴いっぱい食べたいよ」 と、これはまあ、 『ナウシカ』 マニアのO田女史に対しての精一杯気を利かせた賛辞を述べたつもりが、述べた直後に失言であることに気がついてうろたえたり。この、アスベルの長靴云々……の台詞には、その前に ”味はともかく” という上の句がつくのである。そういうわけで、”ヤツらぁぉんでもないものを盗んで行きましたぁ” とか、”ヤックルが平気でいる、危険なものは近くにはいない” とか 、”君も男なら、ききわけたまえ” とか、適当にジブリアニメの台詞を思いつくままにつぶやいて誤魔化してみる。O田女史の場合、ジブリアニメの台詞を聞くと、その後しばらくその続きの台詞を一人で暗誦し続けてくれるのである。その間に逃げればいい。

残業。作業開始の時刻までに間があるので、チームメンバーで夕食を摂るため外に出る。中華料理。自分の優柔不断な性格が周囲に迷惑をかけることのないように、初めて入る喫茶店ではアメリカン、初めて入るソバ屋ではカレー南蛮、初めて入る居酒屋ではタマゴ焼きを注文することに決めている。そうして初めて入る中華料理店においてはタンメンを注文するのが最近の ”わたくしルール” なのだが、テーブルに店員を呼び寄せてみると、チーム内では坦々麺を注文する声が多いことに動揺する。ここの坦々麺は美味しいのかと聞いてみたら、ええ、まあ、いちおう、というような反応。自分はタンメンにしようと思うが実は迷っていると正直に告白すると、名前からしてタンメンよりタンタンメンの方がオトクな感じがしませんか、という回答が返ってきてますますます気持が揺らぐ。それでもタンメンにしたのは、優柔不断な自分の本性に負けたくなかったからかも知れない。食事が終わって帰社した後は、たちまちに眠くなってしまう。22時過ぎにふいに誰かに起こされて、いつの間にか机にうつ伏して眠ってしまっていたらしいことを知る。作業は終わったからというので、うんうん頷きながら皆と一緒に退社。夜なのに昼行灯。