食べるのが早いと妻に再三指摘され続け、長年にわたり妻と食事のスピードを合わせる方法について研究を重ねてきた自分であるが、近頃ついに確実な方法を発見した。妻が食べ物を口に運んだら自分も同じくらいの量をとって食べ、妻の箸の手が止まったら自分も同じように箸を休める。名付けて、忍法 ”鏡食の術” である(単なるいやがらせみたいだが)。というわけで、本夕食の実戦において使ってみる。歩きながらジュースを飲むことが出来ない妻は、どうやら喋りながら箸を動かすことも苦手らしい。レタスを箸で掴んだまま、「今日の出来事の午前中編」 を一生懸命に話している。その様子を慎重に観察しながら、その間、自分も味噌汁の具を引き上げたままでじっと待つ。そのうちに、この人は一体いつになったらレタスを口に運ぶつもりかと疑いたくなってきたら、腹が立つよりも笑いの方がこみ上げてきた。笑うタイミングが間違っていることから、彼女の話題について行けていないことが露呈。この道はやはり険しい。