名可名非常名と老子は言ったそうだが、分かるとは分けることだと言うくらい言葉の中には大切な何かが潜んでいるに違いないわけだが、最近はどうも言葉同士の勝手な核融合が盛んで、凄まじいエネルギーでもって我が内なる世界を大きく変貌させようとしつつある。とりあえず指示語が多くなっている。PCも「あれ」なら、データも「あれ」、改札口も「あれ」、待ち合わせの時刻も「あれ」、我が内なる世界の大半がまず 「あれ」 に取り込まれていく惨景を近頃は何度も見る。太陽も雲もビルも電線もカラスも方向としては同じものなので同じものとなり、ときに平然と入れ替わる。「たくさん月が出ているな」 とか、ごく自然に不自然を語ってしまう。それから、様々な立場が逆転して、電車の上を線路が走ったりする。右と左は頻繁に入れ替わる。分かるとは分けることだと言うのなら、自分はどんどん分からなくなっていく。素敵だ。『オセロー』 と併行で読んでいた 『仮面の告白』 も読了。