友人の結婚披露宴に招かれて朝から出かけていく妻を見送り、それからしばらく読書などしていたが、実際のところ他にも、サンダルの片方を探したり、丸いエビ煎餅を正三角形に齧ってみたり、いろいろ忙しいのである。正午過ぎにジョギングに出てみると、近所には誰もいない様子。世界にたった一人取り残されたような感じ。バラだのパンジーだのグラジオラスだの赤や黄色の花々がまぶしく咲く静かな町の中を、ゆっくりと駆け抜けながら川辺に出る。聴こえてくるのは、鳥のさえずりと川のせせらぎと自分の足音だけである。自動車の排気音も、お節介な音楽もない無音の世界。「オレだけ天国に来ちゃったか?」 と心の中で負け惜しみを言ってみる。幸福感に浸りながら帰宅。シャワーで汗を流し日陰に涼みながらまた読書。そのうち妻から電話がかかってきて、荷物が多いからというので池袋駅まで迎えに行ってやる。実際のところ、ハサミを探したり、冷蔵庫の氷を取り替えたり、いろいろ忙しかったのだけれどな。妻と合流した後は、まっすぐ地元まで引き返し、地元の居酒屋で軽く飲んでから帰る。