早く帰宅できたというのに、スポーツクラブを休んでしまう。怠けグセがついてきたか。ところで志茂田景樹という作家がいるわけだが、ミックジャガーみたいな奇抜な格好をしてバラエティー番組に出演したりして、ちょっと呆れたりした時期があったのだが、この間、NHKの 『課外授業〜ようこそ先輩〜』 という番組に出ているのを見かけて、そのまま番組を眺めているうちに、彼に対する印象がガラリと変わってしまった。もしかすると、いま生きている人間のうちで最も尊敬する人物の一人に、志茂田景樹の名前を挙げてしまうかも知れない。伊藤整の文章に、「夕映えが美しいように、老人の場所から見た世界は美しいのです」 という言葉があるが、その言葉が自然に思い出されてくるほど、彼が子供たちに接する様子は幸福感に満ちたものだった。彼は自分自身でありながら、自分という個性を特徴づけるものを置き去りにして、連綿と続く人類の営みを受け継いだ一人として、子供たちにも誠意をもって接しようとしている。それは、大人でもなかなか得ることのできない大人の視線ではないかと思う。同じような夕映えを自分も体験してみたい。