遅くまで残業。少し気分転換が必要と思われた頃を見計らって、百人一首の中にある良選法師の歌、

 さびしさに宿を立ち出でてながむればいづこもおなじ秋の夕ぐれ

というやつは、テレビも無い殺風景な部屋に一人でじっと座っていた良選法師が、どうにも淋しさが募ってくるのをどうしても耐え切れなくなって、ついに屋外に飛び出してみたら、隣からも、向かいからも、近所の家という家から一斉に人が飛び出してきた、という歌なのだよと、O田女史に教えてやる。彼女は、違いますね、とだけ答えて、再びパソコンに向きなおり、残された実務に立ち向かうのだった。