職場の後輩のS枝君は、週一回カポエラを習っている。昼休み、鮭弁当を食べ終わって退屈だったオレさまは、割り箸をへし折りながら、S枝君にカポエラの魅力など聞いてみた。
カポエラという格闘技は、イメージのとおりブラジルが発祥の地だそうである。10年ほど前に日本にも入ってきて(恐らく 『鉄拳3』 やらブレイクダンスにも影響したものと思われる)、近頃は道場が増えてきているらしい。国内にはすでに団体が5、6もあるそうだ。流派が大きく二つあって、アンゴーラ(ゆっくりやるやつ)と、フェジョナウ(速いやつ、でも相手には当てない)というのだそうである。
主に足で戦うらしいのだが、なぜ手を使わないかというと、別にサッカーが得意だから足並みを揃えようというわけではなくて、その昔アフリカからブラジルへ奴隷として連れてこられた黒人たちが主人の虐待から身を護るために編み出したものだからなのだそうである。つまり手錠に繋がれたままの状態で闘うことが前提なのである(もしかして、ブラジルがサッカーを得意とする理由もこのあたりにあったりするのかも知れない)。ううう。最初は低い姿勢で構える。ううう。だからカポエラは護身術なのであって、試合でも相手に直接打撃を与えることをしない。専守防衛。アンゴーラのような、優雅にゆっくりやるスタイルがあるのも、主人にバレないようにごまかしながら練習したということの名残らしい。ううう。そして音楽を絶やさず、まるで遊んでいるかのように見せつつ身を守る技を磨くのである。だから、ポルトガル語の歌と楽器ができなければカポエラの最高位には上がれないというところが凄いところなのである。