現時点で最も好きな有名人は誰かと聞かれたら、ハリセンボンの箕輪はるかと熱情をこめて答える。人と話すのが嫌いで、学生時代のアルバイトは水道メータを読む仕事だったらしい。図書館司書の資格を持っているのも、むしろ喋らないことが求められそうだから。一人で遊ぶ玩具の王様ともいえる剣玉は1級の腕前らしい。その徹底した内向ぶりにグッとくる。顔に白い布を乗せて眠るとか、エジプト壁画の真似が得意とか、お笑い芸人なので、あるいは経歴も単なるネタなのかも知れないが、剣玉の腕前だけは本物であることを今日確認できた。しばらく彼女を放ってはおけない。

いろいろあってしばらく自宅待機。基本的に読書と妄想。やがて遊びに来られた地元のお年寄りと話す機会を得る。ほんの三十年前はこの辺り一帯も原っぱだったらしい。夕方、薦められるままに地元の銭湯に行ってみる。数年前に越してきて以来初めて地元の銭湯に入るわけだが、思い返せば銭湯を利用する事自体が、もう十数年ぶりである。こうしてみると銭湯は怖い。公衆浴場というわけでホテルやスポーツクラブとも違って、名前も素性も判らない真っ赤っ赤の他人と、いきなり素っ裸で向き合わなければならないのが銭湯なのである。四角いジャングルである。冷たい熱帯雨林である。プラスチックの風呂桶の底が相変わらずケロヨンだったり、脱衣所なのに煙草を吸う人が多勢いたり、ドライヤーの使用料が3分20円だったり、待合所のテレビで五木ひろしが歌ったりする。

銭湯を出て一度帰宅し、それから約束があったので、地元の居酒屋で高校時代の同窓生のKと飲む。互いに不景気を認識しつつ相変わらず暢気な話題で終始する。高校時代と変わらないのが何よりの朗報。