一時期はとても苦手だった 「夜」 という時空が、最近また好きになってきた。先日、自宅の録音テープなどを整理したときに、久しぶりにハービー・ハンコックの 『ラウンド・ミッドナイト』 を聴いてからだ。ぬばたまの闇のむこうから、螺旋を描きつつ止め処なく流れ込んでくる88色の鉱石の連続。歯切れの良い鍵盤の太極拳。ときに歯車のように、ときに針のように、ときに雪のように、ときに氷のように、繰り返し繰り返し意識の扉を叩いてくる。はいはい。はいはい。いま出ますよ。と答えながら、ついそのノックの音に聞き入ってしまっている。

そういえば3年前に同名の映画を観たのも思い出したが、あのときは明るい海辺のシーンが印象的だったな。