まだ 『枕草子』 を読んでいる。なにしろ積読、濫読、並行読みの達人である。読みかけの本なら常に10冊を超える。

枕草子』 はなかなか面白い。こだわっているものが枚挙されていたり、身の周りのエピソードが書かれていたり、長い文章だったり、極端に短かかったり、現代で言えばまさしく清少納言のブログを読んでいるような感じである。橋本治が桃尻語訳など出しているが、実際のところ清少納言はああいった感じの女性ではなさそうである。なにしろ宮中の女房である。思慮深く、かつ青い色の炎で情熱的なのだ。

第89段に、琴の名前の話が出てくる。そういえば、最近は器物に名前をつけることが少なくなった。漫画版ナウシカに出てくる巨神兵も 「オーマ」 と名付けられたことをきっかけに急激に知性を発達させたように、どのようなものも名付けられることによって、はじめて自我が芽生えるのである。オレさまの自転車は流星号という名前がついているが、確かに彼は、他所の自転車よりも自分が自転車であることをより強く自覚している(はずだ)。

とりあえず楽器には名前をつけたいものである。オレさまの手元にもいくつかの楽器があるが、とくにあの部屋の隅でコールガールみたいにやさぐれているクラシックギターなどには、名前をつけてやらねば可哀想だ。小学生のときに質屋でみつけて買ってもらったものであるから 「七草」 と名付けることにする。ああ、急に愛おしくなってきた。