NHKの老老介護の問題に関する特集をみてやりきれない気分になる。
伊藤整の何かの作品中に、

 ”夕映えが美しいように、老人の場所から見た世界は美しいのです。”

というような文章があって、オレさまは久しくその世界に憧れてきた。人生を四季に喩えるなら、それは残酷な冬などではなくて、淋しさを伴いながらもやはり美しく色づいた、賑やかで、しかも静かな秋であって欲しい。

そうした憧れの眼で老いを見つめようとしているオレさまに、老老介護の問題は、畳の上に吹き降ろす木枯らしのように冷たく厳しく非情な現実をつきつけてくる。仏陀は、こうした事態を前にしても 「滅 (苦しみの原因は必ず消せる) 」 と言い張るのだろうか。