予報どおりの大雨。パートへ出かける妻を送り出し、自分も7時半に家を出る。雨のなか自転車を漕いで、受付開始の8時より前に病院に着く。受付後、診察は9時からなので、そのまま1時間ほど待合のベンチでじっとしている。実際に名前が呼ばれたのは9時半頃だった。とりあえずレントゲン。撮れた写真をもってまた診察。異常なし。もう一度、今度はMRIで撮ってみようと勧められる。11時まで順番待ち。待合のテレビに映る 『暴れん坊将軍』 を見ていたら、チャンバラが始まる前に呼び出される。久しぶりのMRIであるが、20分間もカマボコの中でガーガービービーやれれるのにはもう慣れた。再び写真をもってまた診察。ぜんぜん異常なし。またか、と思う。

「気のせいかも知れないよ」

”気” とは、例の ”気が重い” とか ”気がかり” とか、気ミドリとか気クラゲとかそういう ”気” ですか? でも先生、本当に腕が落ちそうなくらい重いのです。ライダーマンみたいにアタッチメントを交換できそうです。エヴァ初号機みたいにシトの身体の一部を使って肩から再生できそうです。とにかく指先に力が入らないのです。そうかね? そうです。力がはいらない? 入りません。少し測ってみようか。はいお願いします。ええとどこへやったかな、ええと、ああキミ、握力計はどこにやったか知らんかね、なんだ、そんなところにあったか、さあこれで左手の握力を測ってみなさい。

懐かしい機械が出てきたものだ。小学生の頃にもこんなのだったが、握力計というのは昔から仕様が変わっていないのか。思い切り掴んでみる。だめだ。ぜんぜん握りこめた気がしない。メーターを読む。

 「……先生、40kgしかありません!」
 「うーむ」

とりあえず肩こりの薬とビタミン剤と湿布薬をもらって帰ってくる。いったいどうなっておるのか。人間を時計に喩えるなら、外見は同じハト時計なのに、健康な人の箱の中は歯車やゼンマイが詰まっているのに対して、オレさまの箱の中ではスナネズミが気まぐれに滑車を回しているのではないかと疑いたくなる。そもそも、豪雨の中を自転車を漕いで病院まで走る病人など聞いたことがないではないか。

帰宅してみたら、すでに午後1時を過ぎていた。
午後3時に出社。夜8時半に退社。

今年は2つのPOGサークルに参加することにしているが、すでに1つのサークル(MiniPOG)ではドラフトが終わっており、今日はもうひとつのサークル(サークル名は未定)のドラフトである。会場は、原宿の 『ターメリック』 とかいう小さなカレー屋。ビールを飲みながら、狭いテーブルの上でドラフトを行う。メンバーはO西さん、Y山さん、M川女史、Akemi女史、Riko女史、オレさまの6名。このうち、O西さん、Akemi女史、Riko女史の3名はPOG初心者。事前に競走馬にとってのダービの意義の説明や、POGの遊び方、情報の集め方などは説明しておいた。Riko女史はその間に 『優駿』 も読んだらしい。Akemi女史は自分の指名予定馬を1頭1頭印刷したカードをあらかじめ用意してきた。O西さんはモバイルPC持ち込み。準備は万端である。

集合したのが夜9時半と遅かったので、時間も無いため、やや慌て気味にドラフトを始める。みなよく手順を理解してくれていて、誰かが既に獲得済みの馬を後から指名しようとする例は多数あったが、大きなトラブルも無く、10位までスムースに終わった。
M川女史はすでに4年目のPOGなので、母ダンシングキィなどを小首をかしげながら出してきたりする。ちょっと生意気。Y山さんはMiniPOGで指名した馬を、ほぼ同じように指名してきた。よほど自信があるらしい。Akemi女史、Riko女史は、オレさまが紹介した ”赤本” をよく読んできたようで、よく知られる評判馬をバンバン指名してきた。考えてみれば他に情報源がないから当然のことなのだが、オレさまとしては少なからず衝撃だった。初心者なのに、セレクトセールの高額取引馬とか、大牧場の生産馬とか、有名な馬主の所有馬などを自然に選び出すことができてしまう、そういう時代なのである。
POG雑誌やWEBサイトの功罪はこの一点に絞られる。日本のPOGレベルは、確かに雑誌やサイトの努力によって底上げされた。しかしながら、その一方で本来POが抱くべき妄想の大部分がこうしたメディアによって奪い去られてしまったのも事実ではないかと思う。そのことがずっと気になっていたのだ。負けないように指名馬を選ぶのは当然のことなのだが、強い馬を応援することで痛快な気分を味わいたいのも勿論なのだが、それだけではない、もっと自由なスタイルでPOGを遊びたい。M川女史も、わずか4年前の初年度の指名馬は、ロミオビームとか、メジロジュリエットとか、サンエムテイオーとか、キョウワスプレンダだった。彼女はきっと、去年指名したロジックよりも、キョウワスプレンダの方にいまでも思い入れが強いに違いないのだ。オレさまもセキテイリュウオーが懐かしい。

約8千頭にのぼる競走馬のリストをEXCEL表で渡して、なるべく馬名や厩舎に記載のあるものを選ぶようにと補足しただけで、本人はとうとう雑誌やサイトを調べずに済ませたO西さんの指名内容は、そういう意味でオレさまの期待どおりのものだった。1位から順に、スズカギャラクシー、スズカストラトス、スズカジェット、スピーディワンダー、ボヘミアンクイーン、ロックザキャスバ、セトノジェネシスエドイナバウアー、モモタロウザムライ、マチカネフクノカミ、以上の10頭である。自動車、音楽、時代劇に関心が強いO西さんならではの布陣である。はたして、このうちの何頭が ”はてなキーワード” にフルマッチするだろうか。ちなみに、4位のスピーディワンダーは、見事にオレさまと競合した。今回は相手が初心者なので譲ったけれども、3位で指名するべきだった。

ドラフトが終わった時点で、M川女史は女性陣の圧勝で終わることを予想した。オレさまも同感だった。なにしろ評判馬のほとんどを、彼女たち3名が分け合う形になったのである。実際のところ、POにとっては、走らない、勝てない、人気がない、という状況の連続こそもっとも健康によくない状態であって、そうした点から思えば、Akemi女史、Riko女史、の二人が初めてのPOGに失望するような事態の発生する可能性は幾分回避されているのではないかと思われる。

なかなか良いドラフトができたと満足したところで、いよいよカレーが出てきた。チキン、牛スジ、ポークの3皿を皆で分け合う。どれも美味しかったが、強いて言えばポークがとても好みの味だったな。いや、チキンの柔らかさにも相当感服させられました。夜11時半頃に解散。渋谷駅まで歩いてから山手線に乗る。電車はメチャメチャ混んでいた。