睡眠不足のまま、老母を連れ、羽田から飛行機に乗って高知へ行く。
国境の長い乱気流を抜けると南国だった。母の実家にはすでに、齢九十を超す祖母を筆頭に、あらゆる親族が集まっていた。従姉妹の子供たちがドタバタ大騒ぎをするなかで、昼間からビールをがぶがぶ飲まされ、良い気分になる。

しかしながら、昨夜は4時間弱しか寝ていなかったせいか、さすがに眠くなったものと思われる。ふと目が覚めると、辺りはもう薄暗くなっており、巣の上でうろうろする女郎蜘蛛のシルエットばかりを物干し竿の端に眺めつつ、オレさまは畳のうえで、蜘蛛の巣に絡め捕られた羽虫のように横たわっていた。

 おお、勇者オレさまよ、死んでしまうとはなにごとぢゃ! 

やがて叔父に復活の呪文を唱えられ、背広にサンダルをつっかけて今度は近所の居酒屋へ連れ出される。”浜あざみ” のテンプラとかいうのが結構美味かったな。